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「これだけサービスの良い日本がなぜ成長しないのか・・・小樽で思ったこと」

小宮一慶のモノの見方・考え方
2024.06.11

先週、毎年恒例の北海道経営者合宿を小樽で開催しました。経営者個人としての人生や生き方を考えていただくセミナーです。今回は、渋沢栄一氏の著書『はじめて世に出る青年へ』を課題図書とし、当社のスタッフの解説にもとづいて、グループでの討議や、経営者個人の自己目標の設定などを2泊3日で行いました。後継ゼミ生も現役経営者に交じって参加し、多くを学んだことと思います。
その研修で、いつものように感じたことは、小樽でのサービスの良さです。小樽築港にあるホテルをここ3年間ほど毎年利用していますが、施設も良く、スタッフのサービスもいつも通り丁寧でした。夜は2日間懇親会をするために、1日目は小樽の寿司屋横丁にあるお寿司屋さん、2日目はもう20年以上前からたびたびお世話になっている海の近くの民宿の食堂でしたが、どちらも料理が素晴らしい上に、おもてなしの気持ちがあふれていました。セミナーが終わった翌日に、親しいお客さまと新千歳空港近くでゴルフをしたのですが、そこもコースの整備が行き届いているうえに、キャディーさんもとても親切でした。
北海道に限らず、日本ではどこに行っても高い水準のサービスを受けられます。新幹線も飛行機もきれいですし、スタッフもとても丁寧です。高級ホテルに限らず、リーズナブルな価格のビジネスホテルでも対応が不満足ということはめったにありません。高級レストランに限らず、町の居酒屋さんでもとても満足のいく食事とサービスを受けられます。
サービス業だけではありません。このところは不祥事で問題が起こっていますが、それでも日本製の自動車の性能は非常に高く、ロケットも世界最高水準です。時計などの精密機械や半導体製造装置、あるいは工作機械などもとても水準は高く、それだけではなく、アニメやゲームなどでも世界のトップ水準を走っています。
それでもこの国は成長しないのです。コロナ前に、この国の稼ぎである名目国内総生産は、555兆円程度でした。現状は約600兆円で、一見成長しているように見えますが、コロナ前の為替レートは110円ほどで、今はご存じのように155円を超す円安です。このレートで換算するとコロナ前は約5兆ドル、現状では4兆ドルを切っています。
給与は円でもらうから問題ないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この国の輸入の大きな部分はエネルギーで、エネルギーはドル建てで決済されます。つまり、ドルベースでの購買力が格段に落ちているということです。その分、海外から来た観光客たちには「バーゲンセール」状態です。事実、泊まった小樽や千歳のホテルでは、韓国をはじめとする外国人観光客が多くいました。
もっと長期で見ても成長が落ちているのは明らかです。さらに、それでも一人当たりの収入が増えているのならいいのですが、そうでもありません。
人口が減少し、高齢化率が今後も大きく上昇する中で、この国を発展させるには、既得権益を排除するための規制緩和などが必要です。そのためには、現状、本当に心もとない政治がしっかりし、セーフティネットを構築しながらも、規制撤廃なども含めた競争力を高める政策が必要なことは言うまでもありません。

【小宮 一慶】


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