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不正のトライアングルを考える

時事トピック
2024.06.20

大手企業による不正行為が大きく取り上げられ、製品が出荷停止になるなど社会問題となっています。組織的な不正問題は、今年に限らず昔から様々な企業や団体で起こっていることであり、不正問題対策は経営において永遠の課題テーマだと言うこともできます。

私たちはなぜこうした不正行為を起こそうとするのでしょうか。背景としては、当該行為が不正に当たると認識せずに行ってしまっている場合と、認識したうえで意図的に行っている場合との、大きく2つに整理できると思います。前者の場合は、知識不足がその主要因と想定できます。よって、解決の方向性としては、コンプライアンスの考え方や規定等の教育などになりそうです。

厄介なのは、後者の場合です。当該行為が不正に当たると認識したうえで意図的に行うに至る背景を考えるうえで、米国の犯罪学者DR・クレッシーが提唱した「不正のトライアングル」という考え方が有益です。

「不正のトライアングル」は、「不正を犯す動機・プレッシャーの存在」「不正を犯す機会の認識」「不正を正当化する理由」の3つの要素が同時に成立するときに、人が不正を起こしやすくなるという考え方です。

①動機・プレッシャー

自身を不正行為へと駆り立てる思いです。かなえたい何らかの欲望や欲求があり、不正行為に走ることでそれが実現できると思い込んでしまったような場合に、不正行為は起こりやすくなるというわけです。その背景には、個人的要因と組織的要因が想定できます。

例えば、個人の生活で大きな経済的問題に直面している人は、そうでない人に比べて不正行為への動機が高まるといえます。過重なノルマが課せられて、達成如何で評価や処遇が変わったりする立場に置かれた組織や従業員は、そうでない人に比べてやはり不正行為への動機・プレッシャーが高まりそうです。

②機会

環境が不正行為の実行をやりやすくしている場合です。その気になれば不正行為が簡単にできそうな環境のほうが、そうでない環境より不正行為を誘発すると言えます。

例えば、社屋が施錠されていない、いち担当者に多大な予算の権限を与える、棚卸が甘い、などといったガバナンス機能の欠如は、機会を生み出すことにつながると言えます。

③正当化

不正行為にもっともな理由付けをし、自分で納得して受け入れることです。不正行為を正当化できると思えるような都合のよい理由を見つけて背中を押してもらい、思いとどまろうとする考えを振り切ってしまうわけです。

例えば、「こうする以外に自分の生活手段はないから、やむを得ない」「会社から受けた数々の屈辱に対して、この程度のリベンジは許されるはず」といった、個人的な要因による勝手な正当化があるかもしれません。あるいは、「周りの人も同じことをしている」「上司に指示された」「疑問に感じながらも、「以前からこのやり方でやっているから大丈夫」と周りから言われた」など、組織的な要因による正当化もあるかもしれません。

なお、この「動機・プレッシャー」「機会」「正当化」は「要件」とされています。「要件」とは基本的に、どれかあれば成立するという条件設定ではなく、すべてが同時に揃うことで成立するという概念です。すなわち、いずれか1つの要素が欠けて3つが同時成立しない状態をつくることができるだけでも、不正は発生しにくくなると考えられることになります。

個人的な要因は、組織による介入に限界があります。一方で、組織的な要因は、組織によって変えることが可能です。

例えば、

・従業員の裁量による判断や自律性を尊重しながらも、最低限のガバナンスやルールは整備し、不正行為が起こりにくくしているか

・不当なノルマを課し「お客さまの都合に関係なく、何が何でも売ってこい」といった不適切な部下指導をしていないか

・見直すべきルール違反の慣習を自社の伝統とし、メンバーに対してそれに同調するような風土を生み出していないか

といった振り返りをし、3つの要素が揃わないような職場環境をつくっていくことが、不正行為の予防として大切になります。


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