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エコーチェンバー現象を考える

経営のヒント
2024.07.17

最近いろいろな経営者様とお話している中で、たまたまエコーチェンバー現象について話題になることが何度かありました。「質の高い意志決定を目指して、多角的な情報を集めているつもりが、自分と同じ意見を聞いて安心しているだけになっていたことに後で気づいた」といったことがあるというわけです。

 エコーチェンバー現象とは、意見や信念、価値観などが似た人同士が集まり、外部の異なる意見が遮断されることで、自分たちの考えが強化され、偏った情報や意見のみが反響し合う状況を指します。閉じた小部屋で音が反響する物理現象にたとえたものです。この現象は、特にインターネットやSNSの普及によってさらに顕著になっていると言われます。

 エコーチェンバー現象に陥らないための対策はいろいろ考えられますが、ここでは3つ挙げてみます。

 ・多様な情報源に触れる: 特定のメディアや情報チャネルからのみ情報を得るのではなく、多様な情報源から多様な視点で情報を集めることです。パソコンやスマホで自分が目にする情報は、自分に合いそうな情報がレコメンドされて表示されている可能性があります。数多くの情報を見ているつもりで、実はエコーチェンバー現象を深めているという結果にもなりかねません。例えば、異なる立場や意見を持つメディアを複数選んで見るようにルール化することで、多少は視野の偏りを抑えることにつながります。

 ・多様な人と対話し交流する: 異なる意見を持つ人との対話を避けず、幅広い人の意見や考え方を理解しようとすることです。異なる視点からの意見を聞くことで、自分の意見の偏りを認識し、よりバランスの取れた視野を持つことにつながります。社外のコミュニティに定期的に参加するようスケジュールを組むなどに加え、社内でも特定のメンバー(極端な場合は、特定の派閥内)とだけ対話するのではなく幅広いメンバーと対話することで、視野の偏りが緩和されやすくなります。

 ・多様な人材を登用する:同じ組織内のメンバーは、その組織文化によって既に過度な同質性が醸成されているかもしれません。よって、今の組織構造・メンバー構成の中で対話量を増やしたとしても、それ自体がエコーチェンバー現象を深める結果につながるかもしれません。

これまであまり採用してこなかったような属性の人材を採用する、あるいは協業する、そのポストにこれまであまり登用してこなかったような属性の人材を登用するなど、多様な人材調達・活用によって、意見交換の内容を多様にすることで、エコーチェンバー現象を抑えることにつながります。このことは、昨今多様性の大切さが強調されている背景にも通じます。性別、人種などの属性や、考え方などの内面が多様のメンバーが組織にいることと、その組織の生み出す成果や付加価値の大きさには関係があるとする報告なども各所で見かけます。

 なお、メンバーの多様性をどこまで追求していくかは、組織の状況にもよります。例えば創業直後のベンチャー企業で、社員の多様性の受け入れ施策に走った結果、生産性やスピード感を低下させてしまい逆効果となるなどの例もあります。自社として、今置かれた環境下でどこまで人材の多様性をもたせるのかは、組織によっても異なるはずです。

 私たちには、自分に都合の良い情報、同意しやすい情報を選ぶという心理的傾向があります。また、私たちは基本的に変化を嫌う生き物でもあります。「視野が偏らないように意識する」といった「意識」だけでは、なかなか実現は難しいものです。視野が偏らない状態につながる仕組みや習慣をつくり、それらの運用・行動に取り組んでいく、というアプローチも大切になると考えます。


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