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下請法見直しを通じて、下請関係からパートナー関係への発展

時事トピック
2024.08.02

下請法違反の事件を伝える報道が後を絶ちません。

7月にはトヨタ自動車の子会社が取引先に無償で金型を保管させていたとして、公正取引委員会から下請法違反に当たるとして再発防止を勧告されました。
金型の無償保管とは、トヨタ自動車子会社が所有している金型を取引先が使用するのですが、量産終了後には金型が不要になるにも関わらず、その後も取引先に無償で保管を強いていたものとなります。
当然、取引先は保管スペース等が必要となり、その分のコスト負担が発生することとなります。

このような金型の無償保管は過去から取引慣行としてあったため、中小企業庁などが19年に新たな取引ルールを策定していました。そのため、トヨタ自動車本体などでは取引先での金型廃棄を進めていましたが、子会社などのグループ会社では徹底していなかったと言えます。
このような取引では業界を問わず根強く、今回のような金型の無償保管に関わる勧告は、20233月以降からでも5例目となるのです。

下請法違反は、トヨタ自動車のライバルといえる日産自動車でも発生しています。今年3月に、日産は車部品の製造委託先36社に、発注時に決めた金額から「割戻金」として一部を差し引いていた金額を支払っていたとして、公正取引委員会から下請法違反の勧告を受けました。
日産は委託先に対して差し引いた金額を支払うとともに、6月の株主総会では内田社長が再発防止を説明することとなったのです。

このような事件からうかがえる、大企業と中小企業をはじめとした取引先との関係性から、原材料高などの価格転嫁も中小企業では十分に進んでいるとはいえません。723日の日本経済新聞朝刊では、中小企業の価格転嫁率は243月時点で46.1%と5割に届かず、全く転嫁できていない企業も19.8%にのぼると報じられています。

このような状況を踏まえ、公正取引委員会や中小企業庁では下請法を見直す議論に着手しています。722日に有識者による初会合を開き、改正に向けた論点を確認しています。
この中では、「コスト上昇下での取引価格据え置きの是正」のほか、前述のトヨタ自動車の子会社の事件を受け、「下請け企業への金型の無償保管押しつけ解消」などもあげられています。

私はこの論点表をみた時、一つの論点に目がいきました。それは、「「下請」という名称の見直し」という論点でした。「下請」という言葉にこれまで疑問を持っていなかった私としては、少々はっと気づかされるものがありました。

たかだか名称に過ぎない、という見方もあるかもしれませんが、名称が意味するものが、思考や行動に影響することは容易に想像できます。ましてや、潜在的にも儒教意識が強い日本においては、「「上」と「下」」、「「先」と「後」」といった言葉が与える影響は小さくありません。

この論点を目にしてから思ったのですが、「パートナー」でよいのではないでしょうか。
「下請」ではなく「パートナー」。
「下請企業」ではなく「パートナー企業」。
お互いが存在しないと事業を進めることができないのですから、「パートナー」で違いはないはずです。

パートナーであれば、存在し続けてくれないと自社も困ることとなります。そのような意識の変化も、下請、いやパートナーとの取引の適正化につながるのではないでしょうか。


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