私のお客さまは、昭和世代の経営者ばかりです。お話ししていると、平成、令和の若者の価値観に寄り添えるかどうかが問われていると感じます。
実は、若者たちは「働くとは何か?」「なぜ会社に属する必要があるのか?」といった根本的な問いを抱えています。どこかで経済的な喜びさえ担保できれば、人は集まるし、離れないと思っている昭和の経営者の会社には人が集まりにくい状況にあります。
すでによく知られた話ですが、若者が職場を選ぶ際には、「この会社で成長できるか」を重視するようになってきています。また、ギャラップの調査で、日本では「熱意をもって働く」人が5%であり、諸外国から比べても低いとされています。これについて、「勤勉であるはずの日本人のイメージと違う」という意見もあります。恐らく、働くことというより、企業のために尽くすことへの意識が低いために、それが「熱意」の低さに表れているのかもしれません。諸外国と比べると就職ではなく、就社の意識が強いなか、会社で働くことの意義を見出しにくくなっているのではないかというのが私の仮説です。
そうした状況で大切にしたいのは、「自社に人材を集める」だけでなく、「社会に優秀なリーダーを輩出する」という視点を持つことです。囲い込みを前提にすると、今の若い子たちは敏感で、そうした会社からは心が離れてしまいます。求めているのは経済的な喜びではありません。働く意義です。社会や顧客への貢献が分かりやすく実感できることです。そうした会社で働かない限り、自らの成長はないという危機感があるのです。
ところが、会社には、そういう危機感のない中堅社員が存在します。経済的な喜びだけを受け取り、働く意義や自らの成長に対する「熱意」のない先輩たちを見て、「あのようにはなりたくない」と感じ、会社を離れていくのです。
ここ数年、会社を見ていく指標として、エンゲージメントが注目されています。このエンゲージメントで大切なのは、自社への帰属意識だけではなく、自社にこだわらずに仕事への熱意があることだと私は思います。
例えば、以下のようなエンゲージメントのレベルが考えられます。
Level0: 何もしないよりは働いた方が良い
Level1: 他でやる仕事よりもここでの仕事が良い
Level2: ここでの仕事の意義はこれだ
Level3: 私にとって、仕事とはこれだ、こういう意義だ
Level4: さらに自分を高めるには、この会社はこのままでよいのか
最低でもLevel3を意識できる仕組みや支援が求められ、さらにLevel4に至ると、リーダーとしての自律的な視点が芽生えます。囲い込みを意識すると、Level2にとどまってしまうように思います。結果として、会社を変えうる優秀な人材を排出することができなくなるという考え方です。
もちろん、これには異論もあるでしょう。それは大歓迎です。何より危機感を持たなくてはならないのは、価値観の変化に素直になれず、思考停止になってしまうことだと思います。