11月28日付の日本経済新聞に『ジビエ販売額、7年で1.8倍に』という記事が掲載されていました。
農水省の「野生鳥獣資源利用実態調査」によると、2023年度に「野生鳥獣を処理して得た金額」は54億500万円と調査が始まった2016年と比較して8割増加しているそうです。
私は東北の田舎の出身で、子供の頃から熊肉などを食べる機会があり、ジビエには馴染みがありました。学生時代も友人がプロのハンターをしていたため、一緒に狩猟について行き野生鳥獣の解体作業の手伝いをしたこともあります。現在でも毎年ふるさと納税でイノシシ肉を注文しており、我が家では野生鳥獣を食べるということに抵抗はありません。
前述のようにかつてと比べるとジビエの利用が増えているようですが、ジビエが身近になったかというとまだそのレベルではありません。農林水産統計(農林水産省)によると2023年度の野生鳥獣のジビエ利用量は前年比30.9%増の2729トンです。一方で古くからジビエを利用しているヨーロッパではどうかというと、2017年度のドイツのジビエ利用量は36000トン(ドイツ狩猟連合会)にものぼります。ドイツ人の6割は年に1回以上ジビエを食べているという調査結果もあります。日本はジビエ利用量が増加傾向にあるものの、本場と比べると桁が違います。
またジビエと関連がある野生鳥獣による農作物被害金額(農林水産省)は2022年度で156億円と2010年の239億円から減少はしているものの、この5年間は下げ止まっています。地方の郊外に行くと野生鳥獣の侵入を防ぐ電気柵などを見かけることも多く、高齢化の進んでいる農家にとっても深刻な問題です。個人的にはジビエが好きですし、農作物被害を減らす意味でも、もっと日本での利用量が増えていって欲しいと思っています。
ジビエの利用量を増加させる上での問題の一つがハンターの高齢化です。年代別狩猟免許取得数(環境省)によるとハンター全体に占める60歳以上の比率は2020年で58.3%です。狩猟は危険も伴いますし、体力も必要です。そのため今後のジビエ利用を拡大する上でハンターの高齢化は大きな問題になってきます。
しかし一方で明るい変化もあります。実は若い世代で少しずつハンターが増加しているということです。20代~40代の狩猟免許取得者は2010年に27800人でしたが、2020年には60000人と倍増しています。それに合わせて2010年に64.0%だった60歳以上の比率が前述の58.3%まで低下しています。最近では“狩りガール”と呼ばれる女性ハンターも増加しており、若い世代でも狩猟に興味を持つ人が確実に増えていると感じます。
近年は熊が人里まで降りてくることが増え、人的被害も出ています。駆除については動物愛護の観点から様々な意見が出ていますが、個人的には人的被害や前述の農作物被害を減らすためにも適切な駆除は必要だと考えています。結果的にジビエの利用量が増え、日本の食文化として根付いてくれると良いなと思います。