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「トランプ政権の経済見通しと懸念」

小宮一慶のモノの見方・考え方
2024.11.26

トランプ氏が米国の次期大統領に選出され、来年1月20日に就任することとなりました。選出直後には、株高など市場は好感して反応したのですが、懸念ももちろんあります。前回のトランプ政権を参考にしながら考察します。
NYダウは、2017年の前回就任時2万ドル程度が、退任時には約3万ドルまで上昇。日本もこの期間株価は上がりました。
懸念は、中国との関係です。大統領選挙期間中に中国製品に60%の関税をかけると発言していました。大統領就任直後にすぐに関税引き上げを行うかどうかは不明で、トランプ氏特有のブラフ(はったり)の可能性もありますが、中国政府や中国製品に対する風当たりがバイデン政権時よりも強くなることは明らかです。
トランプ氏が前回の大統領だった2017年からの4年間を振り返ると、日本経済は米中摩擦の影響を大きく受けました。日銀が3ヶ月に一度、企業の景況感を調査している「日銀短観」を見ると、そのことが顕著です。この調査は、景況感が「良い」と答えた企業のパーセントから「悪い」と答えた企業のパーセントを引いたもので、中間的な答えも認めているので、私の感覚では20を超えていると、景況感はかなり良いと言えると判断しています。
前回トランプ氏が就任した2017年の翌年2018年の最初の3月調査では、大企業製造業は「24」とかなり良い数字でしたが、米中摩擦が激化した2019年の12月調査では「0」まで数値が下がりました。さらに、コロナの影響が出る直前の2020年3月調査では、「マイナス8」まで急速に悪化しました。2018年度にはわずかにプラスだった実質GDPも2019年度にはマイナス0.8%となりました。これらの主な原因は米中摩擦です。(その後、2020年度以降はコロナが本格的に蔓延し、経済は一気に減速したことはご存じの通りです。)
その当時に比べて中国経済は、コロナ対策のための過剰生産と不動産の大不況のために、現状、大幅に減速感を強めています。そういった中で来年1月にトランプ政権が発足するのです。
米国経済は9四半期連続で拡大するなど比較的堅調で、ソフトランディングすると私は考えていますが、中国経済はある意味「重症」です。それがさらにトランプ政権により下押し圧力がかかります。中国経済から大きな影響を受ける日本経済、とくに製造業の失速が心配です。また、トランプ氏は日本を含めた中国以外の製品への10%の関税も示唆しています。
安全保障の問題も大きな懸念です。トランプ氏はウクライナへの支援の削減を以前から表明していますが、これは当然ロシアに有利に働きます。また、親密な同盟国であるイスラエルがからむ複雑な中東情勢への対応にも迫られます。
そうした中、日本に大きな影響を及ぼすのは台湾問題です。中国は台湾へのプレッシャーを強めていますが、トランプ政権になり台湾への関心や関与がバイデン政権より落ちることとなれば、中国がさらに台湾への関りを強める、場合によっては統一を早急に進める可能性もあります。
そうした場合に、沖縄の基地の関係もあり、日本も紛争に巻き込まれる可能性も否定できません。北朝鮮の問題もそうです。もし、紛争が起これば日本経済にも少なからぬ影響があることは容易に想像できます。
いずれにしても、トランプ氏の今後の発言や新政権の具体的政策に注目です。

小宮 一慶


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