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親族承継よりも内部承継が上回る

時事トピック
2024.12.19

帝国データバンクが1122日に発表した「後継者不在率」動向調査によると、かつて65%以上あった後継者不在率は7年連続で低下し、52.1%まで下がったことが分かりました。
帝国データバンクは、この背景について「官民の相談窓口が全国に普及し、事業承継の重要性が中小企業の代表者に浸透した」と分析しています。

また、同調査における代表者の就任経緯(速報値)を見てみると、親族ではない役員などを登用した「内部昇格」が36.4%となり、初めて「同族承継」を上回る結果となりました。
これまで内部昇格は増加傾向にありましたが、今回の調査でその流れが明確になったと言えるでしょう。

実際に、弊社がご支援させていただく企業様でも、内部昇格のケースが増えており、この調査結果は現場の肌感覚とも合致しています。

ここまで内部昇格が増加した理由としては大きく2つ考えられます。
一つ目は、親族内承継をするにしても、親族内に後継者がいないなどがあげられます。
親族内承継を望んでいても、後継者となるべき人がいないケースが増えています。たとえ候補がいても、既に他の仕事に就いているなど、諸事情から後継者を引き継ぐことが難しい場合もあります。
M&Aなど外部から後継者を迎える選択肢もありますが、事業や企業文化に精通した社内の人間に引き継ぐほうがスムーズであると判断されることが多いのです。自社の事情を熟知している内部人材への事業承継は、自然な流れと言えるでしょう。

二つ目の理由は、中小企業の融資における経営者保証の減少です。
これまでは、中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となる「経営者保証」が求められることが一般的でした。この経営者保証は、親族以外の後継者にとって大きなハードルとなっていました。

しかし、近年は国の方針や金融機関の指導もあり、経営者保証の撤廃や緩和が進んでいます。これにより、親族外の承継、特に内部昇格を選択しやすくなったことも、内部承継の増加につながっていると考えられます。

では、経営者(社長)に内部昇格が決まった後継者に対して、現経営者はどのような支援を行っているのでしょうか。

2021年度の中小企業白書における「事業承継前(5年程度)に実施した取組」の調査結果では、以下の3つが上位に挙がっています。

1.先代経営者とともに経営に携わった(58.8%)
2.自社事業の技術・ノウハウについて学んだ(29.5%)
3.取引先、金融機関との関係を引き継いだ(23.5%)

後継者の多くは、企業内の特定の部門で実績をあげているかもしれませんが、全社を見渡して経営に携わる経験は不足している場合がほとんどです。全社を把握し、動かしていくためには、一定期間、現経営者とともに経営を学びながら仕事をすることが不可欠です。

また、取引先や金融機関との信頼関係についても、現経営者がオーナー家であるからこそ築けている信用もあります。この信頼を後継者に引き継ぐためには、現経営者が取引先や金融機関と後継者をつなぎ、信頼関係の構築を側面から支援することが重要です。

今後、内部昇格による事業承継がさらに増加していくことが予測されます。円滑な事業承継を実現するためには、現経営者が後継者に対して上記のような具体的な支援を行うことが欠かせません。

事業承継は企業の将来を左右する重要な経営課題です。企業文化や信頼関係を引き継ぎながら、新たな時代に向けた経営を後継者が担っていけるよう、計画的な準備とサポートが求められるのではないでしょうか。


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