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上下欲を同じうする者は勝つ

今週の「言葉」
2025.01.16

-『孫子』より

今週の「言葉」は、現存する最古の戦略書『孫子』からです。組織が成果をあげるためには、3つの条件が揃っていることが重要だと経営では言われています。すなわち「共通の目的・価値観」「協働・貢献意欲」そして「コミュニケーション」です(チェスター・バーナード『経営者の役割』など)。

今回の「上下欲を同じうする者は勝つ」は、経営者はじめ読まれた方がよく引用される言葉なので、聞いたことがある方もおられるのではないでしょうか。意味は「上から下までのすべての人が、同じ目的を持っていれば勝つ。」となります。
この言葉は『孫子』十三篇のうち、第三篇の「謀攻篇」で説かれています。この「謀攻篇」では「不戦屈敵が上策」とされており、まさに『孫子』の特質でもある「戦わずして勝つ」をどのような着眼で実践するのかが示されています。
但しこの解釈には若干注意が必要で、本篇での意味は、下級兵士から将軍に至るまでの全軍が共通の目的意識をもつことを指していますが、現代の規模感で言うと会社というよりも事業部、或いはチームに近い規模感です。より大きな会社全体でいえば『孫子』にしっかりと書いてあります。
『孫子』自体、非常に分量が少ないですので(その分議論が交わされ注釈が多い)、第一篇の「始計篇」にも有名な言葉が多いですが、そこも含めて、何から謀(はかりごと、政略、戦略)を始めるべきかを説いた言葉を引用します。

「孫子曰く、兵は国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざる可からざるなり。故に、これを経するに五事を以てし、之を校するに七計を以てし、而してその情を索む。一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法。道とは、民をして上と意を同じうせしむるなり。故に、以て之と死すべく、以て之と生く可く、而して危うきを畏れざるなり。」

▼現代語訳

「孫子はいう。戦争は、国家の一大事である。(民が)死ぬか生きるかが決まる戦いであり、(国が)存続するか滅亡するかの岐路でもある。だから、よくよく考え抜かなければならない。そのために戦争について、5つの基本事項で己の力量を測り、7つの要素で、彼我の優劣を比較・検討する必要がある。5つの基本事項とは、第一に「道」、第二に「天」、第三に「地」、第四に「将」、そして第五に「法」である。「道」とは、民の心が、君主と一体化し、民が生きるも死ぬも君主と共にすることに何ら恐れを持たないようにすることである。」

会社の理念や目的がそのまま経営者やリーダーの志・使命感となり、その首尾一貫性による信頼関係が全ての始まりであることはドラッカー流経営で成果をあげ続けるファーストリテイリングの柳井正さんも大切にしていることです(『経営者になるためのノート』第3章)。

その前提があって、現場レベルでも全従業員が心を一つに“凡人をして非凡な成果をあげさせる”組織文化・組織能力が育まれることになります。これが最強の戦略の一つであることは先人が生死をかけ実証済みなのです。
深い歴史観を以って私たちに経営とは何であるかを教えてくれるピーター・ドラッカー先生はそれ故に「明確かつ焦点の定まった共通の使命だけが、組織を一体とし、成果をあげさせる。焦点の定まった明確な使命がなければ、組織は直ちに組織としての信頼性を失う」(PF・ドラッカー『ポスト資本主義社会』)と現代にも教えてくれています。


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