今回の時事トピックは、このタイミングですと決まっていますね。
2024年11月の米国大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利し、2025年1月20日に第47代アメリカ合衆国大統領として就任しました。
これは2017-2021年に続く2度目の大統領就任となります。
トランプ大統領は、就任演説で「アメリカ・ファースト」政策を強調し、移民政策の厳格化、中国との貿易関係の見直し、規制緩和による経済成長の促進などを主要政策として掲げています。
この政権交代により、国内外の経済政策や国際関係に大きな変化が予想されます。
一般論としては、このトランプ政権発足が間違いなく今週のトップ記事となるでしょう。
とはいえ、一般論としてのトランプ政権についての見解だけを述べてみても読者の皆さまへの貢献は少ないと思います。
ここでは、日本の中小中堅企業としては、どのように向き合っていく必要があるのか、と言う点について考えてみたいと思います。
大局的なこととして、大きなスケールでの物事の理解は必要ですが、経営者・経営陣としては結局経営としてどうするのかを判断しなければいけません。大局観だけを語るだけでは評論家になってしまいます。(かくいう私自身、単なる評論家にならぬように精進したいと思います。)
マクロの視点を捉えつつ、短期的にミクロで対応する必要がある点を見ていく必要があります。トランプ政権の4年間を耐え抜けばいい課題と、その先も構造的に継続する課題があります。全ての課題に対処するのではなく、自社の強みと経営資源を考慮した優先順位付けが重要です。
特に、一時的な政策変更への過剰な対応は避け、確実に起こる構造変化を冷静に見極めて経営資源を集中させることが賢明であると考えられます。4年間だけの施策については、その先に戻る可能性が高いですから。
あらためて以下にリストアップしてみましたが、脱炭素などの環境、軍事政策等の地政学的影響、LGBTQなど人権に関する課題、移民に対する対応など、社会的には激変が走るのですが、日本の中小中堅企業の経営において現段階において改めて対応すべき課題は意外と多くはありません。
主眼とするべきは関税関係、米中デカップリングの進展にほぼ絞られるといっても過言ではないように思います。
■トランプ政権期に限定される短期的課題(トランプ政権後には解消される可能性があること)
米国の政策変更に直接影響を受ける分野については、心の準備をしつつ臨機応変に対応をできるような意識が必要です。とはいえ、それが確実に実行されるかは明確ではないため過剰反応をせずに心の準備を中心に進めることと考えます。
- 関税率の変更や貿易規制への対応。特に中国、メキシコ、カナダなど
- 予測不能な施策による急激な為替変動への対応
- 一時的な代替調達先の確保(サプライチェーンの緊急時対応)
■構造的に継続する中長期的課題
政権交代に関わらず、以下の変化は継続すると考えられます。これらの構造変化については中長期的な戦略の変更も視野に入れた取り組みが必要になるでしょう。
- 米中対立を軸とした国際秩序の再編
- 保護主義的な通商政策の継続
- 地政学リスクの恒常化
ただ、突発的に何が起こるかがわからないので、何事も起こり得るという意識で安穏としない心構えは必要になるのでしょう。
MAGA「Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)をスローガンにアメリカファーストで政策を進める中で、少なくともアメリカの経済はより良くなるでしょうし、FRBの高金利政策を批判している姿勢などを考えると、金融政策的にも利下げ圧力がかかるものと考えられます。
日銀は、1月の政策決定会合で、金融正常化に向けて売り上げを実施することが、市場ではほぼ盛り込まれており、日米金利差の縮小からある程度円高方向への是正が入る可能性もあるでしょう。
一方で、アメリカにおいては、経済も依然として好調で、利下げ圧力がかかることによって、インフレ懸念が再燃することも否定できず、利下げ圧力に一定の上限キャップがあるものとも考えられます。
また、日銀の金融正常化も日本の経済状況考えると、それほどスピードを持って進みづらいので上記の円高方向への是正も限定的と思われます。
結局は、ある程度強権で進められる大統領が就任したところで、アメリカの国民(特にニ極化した社会の富裕層ではなく、その他の方)というトランプの支持基盤を考えると、構造的にその支持基盤を失う方向には、舵が切れないということでもあります。
強烈な発言で混乱を生む部分がありますが、冷静に考えれば、その政策のパターンも、自らの支持基盤への影響を意図的に悪化させる方向には進ませないと言う意味では、予測の軸はある程度立てられるのではないかと考えられます。
トランプ政権の先にある構造的な変化の中で、自社に影響がある部分については、中長期的な取り組む必要があるのでしょうが、短期的な激動のイメージに振り回されすぎることなく、冷静に向き合いたいところです。
もちろん、経営者や経営陣としてだけでなく、地球や社会を考える1人の人間としては、様々な影響を心配する必要はあると思います。
1人の人間としての向き合い方と、経営者としての向き合い方を切り分けて考えて、経営者としては、本質を捉えたぶれない軸を持って向き合いたいですね。