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ホンダの赤字転落から感じる仮説思考の難しさ

時事トピック
2026.04.13

私は、経営者にとって重要な資質の一つに「仮説思考」があると考えています。

仮説思考とは、限られた情報の中で「おそらくこうだろう」と仮の答え(仮説)を立て、それを検証しながら素早く意思決定していく思考です。
例えば、近年の猛暑や熱中症対策の義務化といった流れを踏まえ、「熱中症対策関連の商品が売れるだろう」と考え、商品の製造や販売を増やす。このような考え方が仮説思考です。

経営においては、仮説思考がなければ新規事業に取り組めないことはもちろん、既存事業においても新商品の開発や新規顧客の開拓は進みません。
一方で、「おそらくこうだろう」という仮説が現実と一致しないこともあります。

その難しさを感じさせるニュースがありました。自動車メーカーであるホンダの巨額損失です。
ホンダは20263月期において、電気自動車(EV)戦略の見直しに伴い最大25000億円の損失を計上し、最終損益も最大6900億円の赤字(前期は8358億円の黒字)となる見通しを発表しました。これは同社にとって上場以来初の最終赤字となります。

ホンダは2021年に三部社長が就任した直後、2040年にエンジン車からEVへ完全移行する「脱エンジン」宣言を行い、約3.5兆円規模のEV開発投資を進めてきました。
しかし、米国政権が民主党から共和党(トランプ政権)へ移行する中でEV支援策が縮小し、EV市場は減速しました。さらに今年2月、米国が温暖化ガスの有害性認定を取り消し、自動車の排出規制を撤廃したことで、「米国でEVが売れにくくなる」という流れが決定的となりました。
その結果、これまで投資してきたEV関連資産の減損処理を余儀なくされ、巨額損失につながったのです。

この一連のホンダの経営判断には、さまざまな評価があるでしょう。
私自身は、三部社長がEV開発に経営資源を集中した判断は、仮説思考に基づくものだったと考えています。温暖化が進む中で環境対応が求められ、将来的にはガソリン車が衰退し、2040年にはEVが市場の主流になる――そのような仮説に基づき、経営資源を集中させたのです。

しかしながら、米国政権の交代や政策変化により、この仮説は想定通りには進みませんでした。その結果、ホンダは巨額損失を計上し、上場来初の最終赤字に至ったのです。

では、ホンダは「2040年にはEVが主流になる」という仮説に依存せず、トヨタ自動車のようにガソリン車とEVをバランスよく展開する「全方位戦略」を採ることはできなかったのでしょうか。

これは結果論ではありますが、米国政権の交代による政策変更リスクは、ある程度予見できた面もあったと言えます。その意味では、仮説の中にリスクの織り込みが十分ではなく、リスクマネジメントに課題があったとも考えられます。

仮説は当たれば大きな成果や成長をもたらします。しかし外れた場合には、時に取り返しのつかない損失につながることもあります。
だからこそ、ポジティブな側面だけでなく、リスクを含めたネガティブな側面にも目を向けることが重要ではないでしょうか。


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