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苦渋の日銀

小宮一慶のモノの見方・考え方
2026.04.27

今週27日、28日に日銀の政策決定会合が開かれました。このメルマガがリリースされる頃には、その結論が出ていると思いますが、大方の予想では今回の政策決定会合では、政策金利(コールレート翌日物;銀行間で1日だけ貸し借りする金利)の利上げは行われないというものです。現状0.75%の政策金利が維持されます。

イラン戦争により、日銀の判断は非常に難しいものとなりました。イラン戦争前には、今回の政策決定会合で、日銀は政策金利を0.25%上げて1.0%にすると、多くのエコノミストたちは考えていました。それにはいくつか理由があります。

まず、インフレ率が今年に入り、1月2.0%、2月は1.6%とかなり低下してきたものの、政策金利は0.75%と低く、これでは、名目金利からインフレ率を差し引いた「実質金利」はマイナスです。預金をすれば、インフレというお金の目減りにより損をするという状態です。

米国は実質金利がプラスなので、日本の実質金利のマイナスは為替レートにも大きく影響し、1ドル=160円近くの円安を反転させるためにも、政策金利の引き上げが必要なのです。

こうしたことからイラン戦争の影響が出る前には、政策金利の利上げが行われると見られていました。

ところが、イラン戦争が起き経済の先行きが不透明となりました。原油価格や石油製品の高騰だけでなく、接着剤や石油由来製品などの品不足が顕著となり、この先も多くのビジネスに影響が出そうです。

実際、タクシーの運転手さんや小売店の店頭にいる人など、経済の最前線にいて景気の動きに敏感な人たちに内閣府が毎月行っている「景気ウォッチャー調査(街角景気)」では、1月が47.6、2月が48.9だったのが、3月には42.2まで急落しました。この調査での先行き見通しも大幅下落です。

また、1月、2月の物価上昇率鈍化は、昨年12月末のガソリンの暫定税率廃止や電気・ガスの補助金の影響が大きいのですが、今後は、ガソリンなどへの補助金は出るものの、石油関連商品の値上がりなどを考えると、インフレの再燃の可能性も低くはありません。

実際、ガソリンへの補助金が出ていない米国では、2月に2.4%だったインフレ率が、3月には3.3%に急上昇しています。日本でも、円安が続いていることなどから、このままではインフレの再燃が懸念され、そういった意味では日銀は政策金利を上げるという選択肢もあったのですが、先に述べたように、景気の先行き懸念から今回は利上げ見送りということになりました。

しかし、インフレが再燃すると、やっとプラスになった「実質賃金(名目賃金からインフレを引いたもの)」が再度マイナスに陥る懸念もあり、インフレの抑制も必要でそのためには利上げは有効な手段なのです。

一方、別の懸念もあります。ガソリンなどに補助金を出し始めたことで、対名目GDP比で先進国中最悪の財政赤字を抱える日本の財政悪化への懸念から、長期金利(新発10年国債利回り)が再度高騰し、一時2.49%をつけました。日銀としてはこちらへの目配せも必要です。

この先、インフレが再燃すれば、日銀には金融政策が後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」という批判が起こりかねません。6月中旬に次回の政策決定会合がありますが、インフレが再燃すれば、その際には政策金利上げに動かざるをえなくなりますが「遅きに失した」という批判が付きまといます。

また、米国などでは、インフレ時の景気後退を指す「スタグフレーション」懸念も出てきていますが、これは日本でも起こる可能性があり、そうなれば、さらに日銀は難しい判断に迫られることとなります。

いずれにしても、今後のインフレや現金給与総額などの景気指標の動きからは目が離せない状態です。


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