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恒大破綻による経済危機は来るのか

小宮一慶のモノの見方・考え方
2021.10.12

中国の不動産大手恒大集団の債務問題が世界の注目を集めています。総額約2兆人民元(約34兆円、中国のGDPの2%程度)もの債務を抱え、その資金繰りがつかないとのことです。習近平政権による貧富の格差是正政策(「共同富裕」)も恒大の業績に大きく影響を及ぼしたとのことですが、投資拡大による過剰債務が根本問題であることは、世界中の経営者が注意しなければならないことは言うまでもありません。

恒大がデフォルト(債務不履行)になるのか、そうなった場合に、中国経済、世界経済にどれくらいのインパクトがあるのかを考えなければなりません。その際に参考になるのは、過去の金融危機の事例です。

まず、日本で起こった金融危機です。1980年代後半に起こった不動産バブルとその崩壊です。バブルの過程で株価も上昇し、89年末には、日経平均株価が38915円をつけました。最近日経平均が3万円を超えたと話題になっていますが、それよりも高かった頃があるのです。ゴルフ会員権も高騰し、小金井カントリークラブの会員権が4億円したのもこのころです。

しかし、バブルはしょせんバブルですからあえなく崩壊。90年には日経平均は2万円台に下落。不動産バブルも崩壊し、銀行は不良債権の山を抱えました。当初20兆円くらいと言われた不良債権でしたが、結局100兆円、名目GDPの20%に及ぶ額の損害を受け、97年11月の最初の金融危機では、三洋証券、山一證券、北海道拓殖銀行などが破綻、98年には日本長期信用銀行、日本債券信用銀行や中小銀行も相次いで破綻、その後2003年5月にりそな銀行に2兆円の公的資金が注入され何とか金融システムの安定を保つまで、金融界や日本経済は大揺れとなりました。大手行も次々と倒産回避のための合併を繰り返し、日経平均も一時7千円台まで下落したのもこの時期です。そして、その後も長い間バブル後遺症に悩まされました。

世界レベルでもバブルの崩壊があったのは、覚えておられる方も多いでしょう。米国で低所得層向けの不動産ローンである「サブプライムローン」の破綻が続き、それを債券化した商品を多く買っていた、フランス最大手の銀行BNPパリバ傘下の投資会社が破綻したのが2007年8月でした。いわゆる「パリバショック」です。債券市場が機能不全に陥り、日米欧の中央銀行が連日大量の資金を市場に放出することでなんとか市場を維持しようとしました。しかし、金融は安定せず、金融機関の不安説が流れる中、米国の名門投資銀行ベア・スターンズが破綻、2008年9月15日にはリーマンブラザーズが破綻しました。いわゆる「リーマンショック」です。

翌日、米大手の生命保険会社の株価が1ドルまで下落したときに、米政府はそれまでの放任主義の姿勢を180度転換し、7兆円程度の公的資金を注入することで金融危機を食い止めましたが、米国のみならず、日欧はじめ世界の実態経済に大きな打撃を与えたことは記憶に新しいでしょう。

そして、今回の恒大危機です。恒大が破綻してもその負債総額は中国の名目GDPの2%程度ですから、それだけだと何とかなるでしょう。しかし、中国全体が不動産バブルの様相を呈している中で、そのバブルが崩壊すると話は別です。

中国政府としては、富裕層や大企業優遇から大きく舵を切っている時期だけに、習近平政権としては、恒大を直接手助けするのは、政策の整合性からして難しいと考えられます。しかし、恒大の破綻がバブル崩壊ということにつながれば、これは中国経済に大きな打撃を与え、習政権の基盤を大きく揺るがしかねません。売掛債権を持つ零細事業者や一般のマンション購入者などを保護するということで事態を収拾しようとすることも考えられます。

いずれにしても、しばらくは恒大と中国政府の動きからは目が離せません。


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