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推薦図書:『自省録』( マルクス・アウレーリウス著、神谷 美恵子 訳 /岩波文庫 )

経営のヒント
2021.10.14

今週の推薦図書は古典中の古典、マルクス・アウレーリウス著 『自省録』 (岩波文庫)です。
マルクス・アウレリウス(西暦121-180)はストア派(禁欲主義とも)の影響を色濃く受けた哲学者であり、また古代ローマ帝国の最盛期を支えた“五賢帝時代”最後の皇帝としても歴史に名を残す人物です。

 

【このような方に特におススメ】
・人生を豊かにするために人格を磨きたいと思っている方
・リーダーとしての人間像を得たいが何から学ぶべきか迷っている方
・感情に振り回されずに生きるためにはどうすれば良いのかお困りの方
・人生そのものに不安や生きる辛さを感じている方
・朝起きると生きる辛さが自分を襲ってくる方
・アドラーの嫌われる勇気を読んだが、いまひとつピンとこなかった、実践が難しいと感じた方(自分と相手の課題を切り分けることができない方)
・利他の心の大切さは理解できるが目の前のことに惑わされてばかりだと反省している方
・仏教、四書五経等の東洋哲学と本書をはじめとする西洋哲学に流れる共通の成功哲学、原理原則を発見したい方
以上のような方々に特におすすめです。

 

【著者の人物像】
ローマ皇帝であり哲学者でもあったアウレリウス。そのことからも哲人皇帝とも称される彼が心から望んだ夢は哲学者として生きる事でしたが、18歳にしてローマ皇帝の候補者に指名されます。哲学者として生きる夢を失い、それから約10年後の39歳のとき、ついに第16代皇帝に即位します。彼の生きた時代背景を補足すると、ローマ帝国の時代、中でも西暦96~180年の約100年間は優れた五人の皇帝の治世が続いたことから五賢帝時代とも呼ばれ、人類史上まれに見る繁栄の時代とも言える時期です。
ただこの時期がずっとローマが平和な時代だったかというと、実はそうではありません。
洪水や飢饉などの自然災害、そしてローマの3分の一の人口が失われるほどの疫病の流行、そして皇帝在位末期には異民族の侵攻などによって国家の存亡の危機にもありました。
そんな激動の時代の中、一国のかじ取りを任せられたのが最後の五賢帝、マルクス・アウレリウスです。彼は元来、哲学者を志していたように、就寝前には読書と瞑想を愛する平和主義者でした。
皇帝に即位してから亡くなるまでの約20年間、皇帝としての公務、外敵から国家を守るための戦いに明け暮れる日々を過ごし、またそうした激務の中で愛する家族を相次いで失うなど、まさに波乱万丈の人生でした。
皇帝としての激務と冷酷な人生の現実を突きつけられながらも、五賢帝の一人に数えられるだけの気高い精神を保ち、自暴自棄になったり心が砕けたりしなかったのは、若かりし頃から学び探究してきたストア派哲学の教えと実践がその心の支えとなったとされます。因みにストア派のストアとは“ストイック”の語源となった言葉でもあります。この言葉の通り、禁欲主義とも称される哲学。その実践の様子は、具体的には就寝前に瞑想し、1日をゆっくりと振り返り、自分との対話を通じて思ったこと感じたことをノートに書き綴っていました。このルーティンを習慣にしていたそうです。こうして彼が異民族討伐のための戦線の陣中で、自分との対話の記録を綴ったのが、本書『自省録』なのです。松下幸之助さん、稲盛和夫さん、そしてスティーブ・ジョブズなどビジネス界の名リーダーにも通じる行いです。
経営、マネジメントにおいても、その最前線で葛藤する中、リーダーとしての自分、人間としての自分と真摯に向き合ったこの記録は、現代においても多くのリーダーや悩める人々の心の支えとなり、人生に希望を与える書として、正しい考え方や生き方を示す古典としての地位を不動のものにしています。

 

【本書の特徴】
因みに、冒頭訳者の前書きにもあるように、本書は自分との対話を記したメモ書きの文体を成しているため、読み進める文章はやや断片的だったり、物語として読むには完成されたものではありません。しかし、自己との赤裸々な葛藤を綴った無垢な文章は、大帝国の存亡を預かる皇帝という存在でありながら、逆境にもブレない人間のもつべき善の思想、信念、人生や人間としての正しいあり方を探究する上で有益であるだけでなく、不透明な時代を生き抜く我々に勇気と希望を与える血の通った言葉の数々を発見できることでしょう。
また、本書を貫く思想や信条は、ストア派哲学の影響を色濃く表しているため、本書に貫かれる哲学を体系的に学びたい方は、アウレリウスに多大な影響を及ぼしたとされるストア派を代表する哲人の一人、”奴隷出身の哲学者”としても有名なエピクテトスの著書も併せてお読み頂くと学びがさらに深くなると思います。エピクテトスの関連本では、『2000年前からローマの哲人は知っていた 自由を手に入れる方法』やエピクテトスの考え方をマンガも付して分かりやすく解説する『奴隷の哲学者エピクテトス 人生の授業――この生きづらい世の中で「よく生きる」ために』(荻野弘之著)がおすすめです。

本書を貫く思想・哲学、また人間として・リーダーとしてのあり方は、どこか武士道や仏教の無常観にも通じ、その根底にある死生観、人間観は日本人にとって大変馴染のある内容です。2000年以上にわたって人々が正しいとしてきた考え方、世の原理原則を学ぶ一助となる筈です。是非ご一読と本書との対話を通じた思想の探求をお奨めします。


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