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中堅・中小企業のビジョン、そこに“人間愛”はあるか

経営のヒント
2023.01.20

本コラムをお読み頂いている皆さまの中には、経営者や役員、経営幹部、或いはミドルクラス(課長、中堅層)の方が多くおられると思います。皆さまは「ビジョン」を自分事にして部下の皆さんに示したり、目標設定したり、仕事が成果を生むために成長の支援をされていると思います。なぜならば10年前と比べると「ビジョンが大切だ」とおっしゃる企業、リーダーが格段に増えたと実感するからです。

 

確かにリーダーの仕事とは目的や存在意義である理念・ミッションという軸をブラすことなく、未来の具体的なありたい姿である明確なビジョンをリーダーシップの出発点にして組織を導くことです。リーダーの仕事の出発点は根本の理念(自分たちは何者かという目的)と「ビジョン」(目指すべき未来のイメージ)にあるということです。この根本には10年後でも20年後でも何があってもブレない「価値観」を伴います。要するにビジョンを描くには、「目的」「未来の具体像」「価値観」の3つがはっきりしていることが前提です。

 

しかし、現状は厳しいものです。昨今“人の多様性”を強調しすぎるあまり、組織に共通の価値観を持つこと、文化とも言えますが、そのことがとても曖昧模糊、玉虫色のカルチャーに退化している組織が多いように感じます。「一人ひとり違うから」を合言葉に「何が人間として正しいことなのか」という強固な共通の価値観を持たない組織が増えていると危惧しています。

自由を得たければ考え方、価値観による規律が無ければ糸のない凧と変わりません。個人の自立すらままなりません。ビジョンは今いる社員のみならず未来の仲間にも希望と勇気を与えます。それぞれのなれる最高の人生に向かう「夢」と言い換えることも出来ます(「ドリハラ」なんておかしい!と言いたい)。そうなっていなければなりません。このエネルギーが向かう場所は未来の社会・お客さま・社員をはじめとした仕事人生で関わる全ての人々の未来です。

大切なことは商品・サービスの前にそこに「人間の幸福、豊かさ」があるのかを問うことです。換言すれば“その未来に人間愛があるのか”ということではないでしょうか。

 

この直近5年間、実に多くのマネジャー・中間管理職と言われる方々と“リーダー”としての成長をご支援するお仕事をさせて頂きました。いわゆる“中間管理職”は我が国の会社にはたくさん存在しています。しかし、“自ら次世代にわたって世の中をより良い場所にする”という志を内在させたリーダーは実に少ないものです。

私も含めて、まだまだやらねばならぬこと(MUST)があります。中間管理職から高い成果をあげるリーダーになるかならないか、この違いは肩書でも過去の実績でもありません。あえてシンプルに言えば「未来の世をより良くしたいという主体的な未来像」を抱いているかどうか、ということです。未来に向かって情熱(WILL≒明確な意志)を持つことです。

なぜ主語が「世」なのか。会社は仕事をする場所です。そしてその会社は「社会の公器」です。つまり、現在~未来の世の為人の為に仕事をする場所なのです。福沢諭吉が明治後期のやや西洋技術や官僚制にかぶれて日本人の精神が退廃し始めた頃に「私こそ公なり」といった言葉そのものです。

要するに、管理職やマネジャーが優れたリーダーになるためには、「自分の会社さえ儲かればよい」「自分の課さえ業績あがればよい」「今だけ稼げればよい」或いは「自分だけ評価されればよい」といった狭隘な視座、誰もが内在させている利己主義的な人間のあり方から、自分の中にある小さなエゴ(小善)を一つでも多く「大善・大義(世の為人の為)」という自己の外に開いて、「未来の世をより良くする」行動を積み重ねることです。そしてその出発点が「ビジョン」なのです。そこに正しい努力の積み重ねである「積小為大」のゴールがあるのです。このことがなかなか伝わりにくい、そのことの自分の未熟さを日々痛感しています。

 

ビジョンの実現は、多くの場合、成り行きでは得られない成果をあげることです。数字は結果です。いまだに散見されますが、数字目標だけで「ビジョン」とする会社が存在します。それは大きな間違いです。いや、むしろ人間にとって害悪です。

「企業の外により良い変化をもたらす」成果が必要です。成果とは仕事を通じて一歩でも「世」を良くすることです。成り行きでないゆえに「変革」も伴います。変革とは痛みも伴います。最も苦痛なのはリーダー自身が「自己を変革する」場合によっては安定を捨て去ることに似た“自己否定”も求められます。その覚悟を支えるのは原理原則、正しい考え方を修養し続ける、つまり人間としての成長を志す者にのみ宿るビジョンです。そのご覚悟を持ったリーダーを一人でも多く世に排出する、私の仕事はまだまだ終わることはありません。

 

皆さまの会社の中で、もし明確なビジョンがないのならば、それが大きな問題であることを深く一人ひとりが自覚すること。その現実直視から変革は始まります。自社の中でリーダーが育っていないことを嘆く経営者様がおられれば、その因果は“目指すべき明確なビジョン”を描けずにいること“ではないでしょうか。

誰が描くのか、当然”上から“です。或いは経営チーム、マネジメントチームでも良いと思います(経営層の人間関係に信頼が土台に無ければのちのち多くのコミュニケーションコストを伴います)。リーダーに「どこを目指して進むのか」が無ければどこに会社組織を導くというのか、無燈で暗夜を歩くようなものです。そうした事業や仕事は長くは続きません。

 

そして働くみんなが共感するまで、お客さまや社会に成果をもたらすまで、決して諦められない、そんなビジョンを描いて、これからも諸行無常の世をより良い場所にしていきたいものです。その祈り、愚直で挑戦的な実践、そしてそのプロセスに人間としての成長を伴って次世代に勇気と希望を与えること、その仕事に皆さまと共に没頭できたなら、とても有り難いことです。この弛まない取り組みこそが、未来にも”人間愛“を失わせないことに繋がると信じます。


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