最近、人の話をじっくりと聞いたなあ、と感じたのはいつでしょうか?
つい昨日だよ、という方もいらっしゃるかもしれませんね。
ドラッカーは成果をあげる人の八つの習慣を「経営者の条件」において紹介していますが、実はその八つのあとに、もう一つ「聞け、話すな(Listen first, speak last)」を加え、あまりに重要なので原則に格上げしたいぐらいだと述べています。
人が、自分のことを話したい、分かってもらいたい、と思うのは自然な欲求です。だから「聞く」ことが難しいわけですが、それは相手も同じだからこそ、特に意識して耳を傾け「聴く」ことには効用があります。
組織のなかにおいて、人を自律的に動かすためには、その人が本当は何に興味を持ち、何をしたいと思っているのかを知り、その人が持つ強みが何なのかを知って、その人の欲求と強みを、組織がなすべき仕事に重ね合わせることが必要です。それを知るには、まずはその人の話を聴くことです。
自分の経験でも、この人はすごいリーダーだと思った人がいますが、人の話を聴き、引き出すのがとても上手な人でした。とにかくニコニコしながら、うんうん、へえ、面白いね、なるほど、と興味を示して反応しながら話を聴いてくれるのです。そこで意見を挟んだり、自分の話はしません。結果として、彼は人材の配置や抜擢がとてもうまい人でした。私も当時それで全く違う仕事に抜擢してもらった一人です。
リーダーだけでなく、新人にとっても同僚となる人達の話を聴くのは有効です。組織の文化、一人ひとりの強みや背景が分かると、新人であっても早いうちに全体像を理解し、組織を活かすことができます。ある中堅の企業では、新人が「人の輪ラリー」と称して、社内の人とフリートークし、その人に次の人を指名してもらうことをどんどん繋いでいくという仕組みで活躍を促しているそうです。
そして「聴く」ことは組織の中だけでなく、外にむけての成果、つまりお客さまへの貢献に重要となります。顧客理解においては、こちらの仮説をぶつけるのはずっと後になってからであり、まずは徹底的に「聴く」ことから始まります。その人はどんな考えを持ち日常を送っているのか、どんな行動をしているのか、何に喜び、何に悩んでいるのか。興味を持って聴くときはとにかく相手のことだけを考える。その人(または企業)のことをとことん理解してから、自社ができることを考えるのです。
マーケティングにおいても、新規事業開発においても、これが基本動作です。
最後におまけの効用として、人は話を聴いてくれた人に対しては、安心感、ひいては信頼感を持ちます。これは組織の中でも外でも、もちろん良いことですね。
なにかうまく行っていないなあと思うことがあれば、少し姿勢を正して、徹底的に「聴く」ことから始めてみませんか?きっと新しい気づきがあるはずです。