パーソナルコンピュータの父とも呼ばれるアラン・ケイの言葉です。メインフレームしかなかった1970年代にノートパソコンの原型を考案した人物です。そのデザイン画などをネット上で見ることができますが、その先見の明には驚かされるばかりです。
そのアラン・ケイが残したのが、この言葉です。
「未来を予測する最良の方法は、それを発明してしまうことだ」
(The best way to predict the future is to invent it.)
この言葉には、コンサルタントとして深く感銘を受けました。
私たちは、お客さまの経営計画づくりのお手伝いをしています。単年度ではなく、5年先、10年先のわが社は何を実現しているのか、未来のビジョンを描く営みです。
経営計画づくりをご提案すると、以下のような反応に会うこともしばしばです。
「10年先のことなんて分からない。」
「まずは、目の前のことに集中するべきでは?」
もちろん、未来を予測することは不可能です。今回のコロナ禍を予測できた人はまずいないでしょう。しかし、私たちは未来を自由に思い描くための「言葉」という道具を持っています。コロナ禍にありながら、コロナが収まった未来を私たちは思い描いてきました。いま、目の前にはないものについて考えたり、伝え合うことができるのは「言葉」があるからです。
未来を考える経営計画づくりで、私が大事にしているのは、自社が常に立ち返るべき「言葉」を軸にすることです。社長や幹部と共に社内に蓄積された資料などを読み解きながら、自社の存在意義を言葉にしていきます。
ある3代目社長のお客さまでは、創業以来続けてきた社内報が大きなヒントになりました。代々の経営者が考え、紡いできた言葉の中に時代が変わっても変わらない自分たちの原点を見出したのです。こうした言葉が見つかると、組織は活気づいていきます。
逆にそうした言葉が見つからない状況では、どうなるでしょうか?
新しいことをやろうとすると、成功するかどうか根拠を求められてしまいます。私たちに未来を予測する能力はないにも関わらず、です。
アラン・ケイは「未来は、あらかじめ引かれた線路の延長上にあるのではない。それは、われわれ自身が決定できるようなものであり、宇宙の法則に逸脱しない範囲で、われわれが望むような方向に作り上げることもできるのである」と説いています。
未来はつくるものです。
その前提に立つと、経営計画や経営という仕事の捉え方も変わってくるのではないでしょうか。