皆さんは、IDGsという言葉を聞いたことはありますか?
おそらく初めてお聞きになる方がほとんどだと思います。
まだ黎明期ではありますが、このIDGsと言うものについて、今日は簡単にお話ができればと思います。
IDGsとは、「Inner Development Goals」の略で、個人の内面的な成長を目指す枠組みです。
もともとは社会課題の改善・解決を目指したSDGsについて達成度合いに課題があり、その達成には関わる個人の内面的な成長が不可欠であるとの課題意識から生まれたものです。
IDGsでは5つのカテゴリーが設定されています。
①Being 自分のあり方 自己との関係性
②Thinking 考える 認知スキル
③Relating つながりを意識する 他者や世界を思いやる
④Collaborating 協働する 社会的スキル
⑤Acting 行動する 変化を推進する
そして、それぞれの項目の中にターゲットスキル(スキルだけではないと思うのですが)として、
「①自分のあり方」には真摯さ、自己理解や、「②考える」については安岡正篤先生の思考の三原則を想起させる、根本的・多面的(クリティカルシンキングとパースペクティブスキル)、そして長期的(長期思考とビジョニング)に考えることなどが織り込まれています。
また、「③つながりを意識する」では、感謝の気持ちや謙虚さを高めること、共感と思いやりの意識などがあり、「④協働する」には、コミュニケーションスキル・包含(インクルーシブ)マインドセットなど、「⑤行動する」では、勇気や粘りづよさ、楽観性といった要素があります。
稲盛和夫さんがおっしゃる、「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」にも通ずる要素であろうと思います。
自身や会社のあり方を洞察し考え、対話して共感し、世の中の複雑さを根本的多面的長期的に捉えて、思いやりや感謝の心をもって他者と協働して楽観的に勇気をもって行動する、というようなイメージでしょうか。
豊かな人生のために、そしてリーダーシップを育むためにもとても有効であると感じます。
古典などの東洋の思想や、様々な偉人の言葉や考え方を、体系的に整理したものと考えることができます。
人間の内面的な成長は単純な指標等で表せるものではありませんが、これらの項目を意識し複合体として人間力を高めることを意識しながら、少しずつ自分の行動に取り入れていくことによって、人生が少しずつ豊かになり、そしてそのような人たちが集合するチームや組織がより効果的に機能するようになっていくのではないかと考えています。
私自身も、このIDGsの項目で言えば、「①自分のあり方」や「②考える」に偏りがちな人間ですが、改めて「③つながりの意識」や「④協働」「⑤行動」を意識することによって、考え方や行動が少しずつ変わってきているように思います。IDGsも経営と同じく実践です。実践を通して様々な気付きがあります。
全ての項目を一人の資質だけでカバーできるものではありません。これは組織や経営についても同じことが言えます。だからこそ、それぞれが協力して、チームや組織で全体をうまく機能するようにすればよいのです。
それこそが「強みを活かす」と言うことであり、強みを活かせる組織とはこのIDGsにあるような内面の成長を目指して、なれる最高の自分を目指している人達の集合体としての組織なのではないかと考えます。
経営に落とし込んで考えても、経営者は経営者である以前に1人の人間です。経営者が1人の人間としての自己を高めて、会社のミッションやビジョンに昇華させていくという流れがあります。
また、社員さんや経営陣の皆さんも同じように、その立場である以前に1人の人間であり、その人間としての自分自身に向き合いながら、この5つの要素を軸にして、自身の内面を高めていく事は、何も会社にコントロールされやすい自分を育てると言うよりは、自分の人生をより豊かにして他者との関わりの中でより社会に貢献できる自分であるために必要な枠組みなのだと思います。
IDGsは、人間の内面の成長を追求するものですので、日々進化しています。今私が認識しているものも、発展途中の段階のものです。更に人間の成長はどうあるべきか、時代の変化や社会やお客様の要請によって優先順位変わるところと、変わらない根本があるのだと思います。
最後に、私自身も、このIDGsを紹介する書籍に執筆をさせていただきました。経営と人間学を体系的に捉えるよい機会となりました。