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中国車メーカーの輸出戦略

経営のヒント
2024.01.05

1229日の日経新聞記事「中国の自動車輸出、日本抜き世界首位」によると、2023年の中国の自動車輸出台数が、日本を抜いて初の世界首位になる見通しとのことです。2019年には輸出が400万台を超えていた日本に対し、中国は約100万台でした。わずか4年で4倍の差を逆転したわけですので、たいへんな勢いだと言えます。おそらく、両者が今後再び逆転することはないでしょう。

輸出の追い風になっているのは、欧州を中心とした各国のEVシフトです。同新聞記事によると、EV世界2位の比亜迪(BYD)の主力車種であるSUVATTO3(アットスリー)」が、欧州で売れているそうです。欧州での価格は38000ユーロ(約600万円)、5万~6万ユーロとされる欧州内での平均的なEVに比べて安価なことが消費者をひき付けていると紹介されています。アジア向けのEVも台数を伸ばしています。

しかしながら、中国から輸出される車の多くは、意外にもガソリン車やディーゼル車が占めています。EVなど「新エネルギー車」の輸出は全体の約1/3程度で、約2/3はガソリン車やディーゼル車などの旧来の車です。地政学的な影響で伸ばしたロシア向けに加えて、メキシコ向けも伸びています。同記事を参照すると、110月のメキシコ向け輸出は、前年同期の71%増の33万台と急伸し、「中国メーカーはまずメキシコで販路を開拓して消費者を囲い込み、米国やカナダといった北米市場に打って出ることを目指している」と紹介しています。

以上を考察すると、中国車メーカーが数年にわたって次のような戦略をとってきたことが想定できます。

・環境政策から、世界の中でEVシフトが最も早いスピードで進むと想定した欧州で、新エネルギー車拡販を全力でしかけることにした。

・東南アジアは、日本車メーカーが圧倒的なシェアを占めている。ガソリン車など旧来の車では日本車メーカーに勝てないため、新エネルギー車を売り込みEV市場を作り出し、日本車メーカーから自動車全体のシェアを奪うことを目論んだ。

・他方で、ロシアやメキシコなど、ガソリン車など旧来の車でも十分商機があると踏んだ地域には、ガソリン車やディーゼル車を輸出し、収益を確保していく。

各市場の特徴を踏まえた上で、既存の商品・サービス、新規の商品・サービスをどのように売り分けるのかは、経営・マーケティングにおいて大切な視点です。中国車メーカーの戦略は参考になるのではないでしょうか。

一昔前に比べ、消費者からの中国車に対するイメージは大きく変わっています。今や、EVにおいてはBYDがテスラに次いで世界2位です。選ばれやすくなった中国車は、今後さらに躍進していきそうです。


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