今年最初の時事トピックとして、今年11月に予定されているアメリカ大統領選挙を軸に、その結果が日本にどのような影響を与えるのかについて考えてみたいと思います。
この2024年の世界の中で、最も注目を集めるのがアメリカ大統領選挙であるのは間違いないでしょう。
その中でも、トランプ大統領の再選が注目されています。
トランプ氏は共和党内では圧倒的な人気を誇っており、財界を中心にヘイリー元国連大使を支持する動きはあるものの、まだまだ支持率の差は大きい状況です。共和党内でも議事堂襲撃の記憶からトランプ氏への反発は根強く、まだまだ予見できないものの、トランプ氏が共和党の大統領候補となる可能性は大きいと考えます。
一方で、現職のバイデン大統領は民主党の大統領候補となることは確実視されているものの、ここ最近の世論調査では支持率でトランプ氏を下回っています。インフレ対策などの国内政策や、ウクライナやイスラエルなどの外交政策が米国の思惑通りに進んでいないことも支持率低下につながっているのでしょう。
もしトランプ氏が大統領選挙で再選されるとどうなるのでしょうか。
故安倍晋三元首相が残された「安倍晋三回顧録」を読むと、下記のような安倍氏の回顧があります。
「トランプは、「なぜ米国が西側諸国の負担を背負わないといけないのか」という考え方を持っていました。西側の自由主義陣営と、中国、ロシアを中心とした権威主義的・覇権主義的な国が対峙する構図の中で、米国が西側をどうまとめ、中露の行動を変えていくのか、という発想は、あまり持ち合わせていないのです。」(「安倍晋三回顧録」「第6章海外首脳たちのこと」より抜粋)。
この安倍氏が指摘するような志向が現在のトランプ氏にもあるとするなら、トランプ氏が大統領に再選されるとアメリカは再び内向きとなる懸念があります。そして、その内向き志向が与える影響は、現在の世界情勢を考えると一期目よりも大きくなるかもしれません。
特に日本としては、中国の台湾政策に与える影響が心配です。1月13日には台湾の総統選挙が実施されますが、ここで台湾独立派である民進党が勝利すれば、中国の台湾侵攻の脅威は更に高まるでしょう。そのうえにもしトランプ氏が大統領となると、中国は米国の介入が弱まると判断し、更に侵攻に傾く恐れがあります。
もし中国の台湾侵攻が現実化すれば、日本の安全保障上も、経済上も与える影響は計り知れないものがあります。台湾に隣接する沖縄県の島嶼部の安全が脅威にさらされるほか、中国軍と米軍・自衛隊との衝突なども懸念されます。当然、日中間の経済交流も断絶を余儀なくされるでしょう。
このような事態を回避するためには、仮にトランプ政権に戻ったとしても、日本政府としてはアメリカが西側諸国のリーダーとしての責任を果たす(そのことがアメリカの国益にもかなう)ことを伝え続けることが重要です。
そのためにも、日本の政治的リーダーシップを回復することが2024年の日本政治の最大の課題ではないでしょうか。
また、企業経営としては、対中国関係については最悪のことも念頭に置きながら経営することが求められます。仮に台湾侵攻が起こったとして、企業存続には影響を与えないような対策を進めることが2024年の課題となるでしょう。中国・台湾での事業展開は一度見直しが必要だと考えます。
年始早々、あまり明るい話題ではありませんでしたが、こうした懸念が杞憂に終わり、平和で幸福な世界が2024年に実現することを祈ってやみません。