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変革の力とは、まず思想、そして理論と実践の葛藤にある

経営のヒント
2024.04.11

昨日(4月9日)の日本経済新聞の朝刊(総合2)に「倒産増、平時へ新陳代謝 昨年度9000件超す」とありました。政府による非常時(コロナ禍)の支援が終わり、昨今の物価高や賃上げ傾向、そしてコロナ禍以前からその傾向が顕著であった人手不足により、殊に中小企業の苦境が取り沙汰されています。東京商工リサーチの調査を観てみると、産業別では全産業で前年度を上回っており、中でも最多は「サービス業他」の3,028件、次いで建設業1,777件とあります。何れも私が深く関わってきた業界です。

企業が倒産するのはテクニカルに言えばキャッシュが無くなる故ですが、長期的且つ根本的にその原因を捉えるならば、その原資であるお客さまと働く従業員の間で生み出される「付加価値」を生み出せなくなることです。先行きが不確実、不透明な時代と喧伝されて久しいですが、それを乗り越えていく基本的な考え方(パラダイム、原理原則)はずっと変わりません。

私がとある老舗企業で変革リーダーとして苦悶していた丁度10年前に出会ったドラッカー先生の言葉によれば「組織が生き残りかつ成功するには、自らがチェンジ・エージェント、すなわち変革機関とならなければならない。変化をマネジメントする最善の方法は、自ら変化をつくりだすことである。」(『ネクスト・ソサエティ』2002年刊)とあります。企業はその衰退の道を転げだすとなかなか立ち直るのは難しくなりますが、倒産への道に転げ落ちる萌芽は歴史的な事実を観ても常に“一見成功している時”“順境の時”に見出されるのです。このことについてはドラッカー先生が世に出した世界で初めての経営の教科書とされる『現代の経営』で次のように指摘しています。「今日成功している企業の多くが、一世代前のイノベーションの成果を食いつぶしながら安逸を貪っている危険がある」と。因みに本書は丁度70年前の1954年に書かれた書です。

要するに企業が倒産する、或いはその存在価値を失う元凶は、自ら変革を行わなくなることです。逆に無名な凡庸な企業であっても自ら変革を行うのであれば、偉大な企業に躍り出ることも可能となります。何れにしても、変革を自ら起こそうとする「チェンジ・リーダー」(変革リーダー)の存在が不可欠です。経営の原理原則をその歴史の蓄積から学び、理論と実践を積み重ねてこられた経営者には自明のことだと思いますが、なかなか根が深い問題となっている、というのが私の見立てです。ではどうするか。

持続可能な企業であるために見直すべきは3つです。上から順に短期・中期・長期的な視点に立っています。

①現事業(本業)が迎えているすでに起こった未来、時代の流れを大局的且つ長期的に捉えて戦略・戦術を修正する(方向付け)
②変革リーダーが継続して育まれるマネジメントの基盤を早急に整備する(資源の最適配分)
③思想・信条(自社のPhilosophy=哲学・存在の目的)を組織文化とする

上記3つを具体的に述べるのは紙幅の関係上かないませんが、中長期的な取り組みには実証されてきた理論と原理原則に基づき且つ自社と環境に合わせて、プロセス・ステップを踏むことで戦略的にうまくいく確率を上げることが出来ます。例えば②はいきなり変革リーダーを育てることはできません。リーダーとなる第一歩は組織を作ることが出来ることです。そのために人財の育成ができる理論とある程度の人間力を備えなければなりません。なぜならば、変革は組織の変革(適応課題と言いますが人の痛みや心理的な変革、そして戦う武器を変えること)を伴うからです。人財の育成ができない人に変革は起こせないということです(一時的なヒットは生み出せますが…)。
さらにこの「変革リーダー」を経ないで昨今流行りの「心理的安全性」その手段としての「コーチング」施策によってのみリーダーの育成を行うのは危険です。昨今の熱意ある若者たちの言うところの「ゆるブラック企業」の現象を生み出している温床はまさにこのリーダー育成順序の間違いです。
そして何よりも決定的に重要なのは③です。始めにないものは最後まで無いのです。これが無いと虚しく空っぽの組織になってしまいます。働きがいよりも働きやすさが優先された“ゆるい組織”に劣化します。

変革がまず取り組むことの第一(クルト・レヴィンやコッターの理論が有名)は安定志向になってしまった組織と人の問題です。このことの本質を捉えなければ、どんなアクションも号令も表面的なものに終始して却って“変革疲れ”を惹起し組織のパワーを奪います。変革は「組織文化」の問題だと捉えて根底から手を打たない限り、表層的な結果となり変革は成りません。以上のことはすべて経営者、組織の「長」の責任と捉えて学び挑み続けること、そう感じ取っていただけるなら、真の働きがい(≒生きがい)の感じられる会社・社会を次世代に引き継いでいく為に有り難いことです。


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