こちらは井上尚弥選手の言葉です。著書『勝ちスイッチ』からの引用となります。
井上選手は、先日のタイトルマッチで、難敵であるルイス・ネリ選手に6回TKO勝ちして、四団体統一王者のベルトを防衛しました。井上尚弥選手の強さは様々に語られます。パンチの強さ、スピード、ディフェンス技術の高さなど多々ありますが、「一番の強みはハートだ」と所属ジムの大橋会長はいいます。チャンピオンになって10年です。世界のタイトルマッチを戦い続けています。毎回、過酷なトレーニングを行い、周囲のプレッシャーを力に変え、100%の自信を作ってリングに上がり続けています。
そんなモンスターも人間です。ケガもあります。強いとされるハートだって様々な感情に襲われます。今回の試合では、「気負っていて、浮足立っている部分もあった」と試合後のインタビューで語っていました。その影響もあってか、1ラウンドにダウンを奪われています。ただ、その後が圧巻でした。冷静に立て直して、逆転のノックアウト勝ちを収めました。毎回、毎回100%の準備をして試合に臨んで鍛えてきたハートの強さが発揮された一戦でした。
これだけ結果を残していると、負けることが怖くなってもおかしくありません。知らず知らずに心に力が入って、パフォーマンスに影響することもあるでしょう。そうした誰しもの心にあるであろう弱さに向きあって、高めようとしていること自体が尊いし、その姿を表現することが井上選手自身の存在意義になっているのではないかと思います。
著書の中では「負けないことより、逃げないこと」という言葉が出てきます。井上選手もプロでは無敗ですが、アマチュアでは6敗、ロンドンオリンピックの予選でも敗れています。その挫折の中で学んだのは、逃げずに向き合うこと。やれたはずのことをやらずに、言い訳してしまうところがあったといいます。
挫折からいかに学ぶか。
私たちにも多かれ少なかれそうした節目があったはずです。これからもあるでしょう。モンスター級の心をつくることは簡単ではありませんが、「せっかくの挫折の機会」に向き合えるよう少しずつ心を鍛えたいと思います。