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M&Aできない中堅・中小企業の企業間でも、共同配送で連携のきっかけを作れないか

時事トピック
2024.05.23

今年4月から物流業界にも労働時間規制が適用され、懸念されていた「2024年問題」が本格的に始まりました。労働時間規制が強化されたことで、もともと人手不足感があった物流業界の人手不足が深刻化し、「物が運ばれないのでは」といった心配の声さえ事前にはあがっていました。

4月から始まって2か月弱となりますが、皆さんの周りでは影響が現れているでしょうか?

私がコンサルティングのなかでお聞きする限りでは、物が運ばれないということは現時点ではありませんが、包装などの付随的業務の品質が落ちているのでは、というお話しをお聞きすることはありました。また、4月以降、運送会社さんから値上げ要望を受けることが増えているお話しは多くのところでお聞きしています。

2024年問題が今後更に深刻になる前に、運送会社各社でも様々な取り組みを始めています。そのなかでも、複数の荷主の荷物を一つのトラックで運ぶ共同配送は多くのところで検討されています。

共同配送であれば、トラックの積載率を改善したり、配送ルートを最適化する配送効率の向上が図れ、限られた人員でも配送することができます。また、運行コストを荷主が分担することによる荷主のコスト削減や、CO2排出量の削減による環境負荷の軽減など、多くのメリットが期待できるのです。

この共同配送の取り組みとして、西濃運輸を中核とするセイノーホールディングスと日本郵便グループとの共同配送の取り組みはメディアでも大きく取り上げられました。両社の共同配送の取り組みについては、今後他の運送会社にも参加を呼び掛けるとされています。

また、自社物流を持つコンビニのファミリーマートやローソンにおいても、東北地方の一部で商品の共同配送を始めると4月に発表があり、今後共同配送する地域を拡大していくそうです。

それでは、荷主でもある中堅・中小企業にとって、このような共同配送は運送会社の取り組みに乗っかるしかないのでしょうか?実は、それだけではなさそうです。

4月9日の日本経済新聞電子版に「機械部品商社の疋田産業、石川の同業者と共同配送試行」という記事があり、私は大変興味深く読みました。

本記事のなかでは、石川県白山市にある機械部品商社の疋田産業さん(年商約93億円)が、同業2社と共通する得意先の機械メーカーを対象として共同配送を行うとありました。3社で共通する得意先は約40社あるとのことで、この得意先に向けて3社の荷物を共同配送していく計画なのです。この共同配送により2024年問題に対応するとともに、得意先の荷受け業務の効率化も目指しているのです。

現在、得意先に共同配送への理解をお願いするとともに、共同配送の方法について、物流コンサル事業者と協議しているとのことでした。

この記事を読んだ時に感じたのは、M&Aまでに至らない同業の企業間でも、共同配送により連携することができるのではないか、ということでした。これは私の実感で、意外に思われる読者もいるかもしれませんが、同業の企業間においてはM&Aが進みにくい実態があるように感じています。その理由は様々ですが、やはり同一エリア内で同一ビジネスを営んでいると、ライバル意識が強すぎ、市場縮小への対応などの合理的理由だけでM&Aが進みにくいということがあるのです。

そのような時に、M&Aまでに至らなくても、共同配送などの共同の取り組みを進めることで、物流コストの低減だけでなく、お互いの関係性が深まるという効果も期待できるかもしれません。その関係性を踏まえて交流を続ければ、その他の問題・課題についても共同で解決しようという動きにつながるかもしれません。

共同配送は、そのような企業間連携のきっかけ作りにもなると考えています。


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