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退職代行サービスをどう思いますか?

時事トピック
2024.06.06

ゴールデンウイークが明けた58日のニュースで「新卒社員が退職代行サービスへ殺到」という話題が取り上げられていました。例年であれば、五月病というワードが取り上げられることが多く、辞めないまでも不安な状態になっている新卒が増えているという話は聞きますが、退職殺到というワードには正直驚きました。
今日は、この退職代行サービスについて考えたことをお伝えできればと思います。

■退職代行サービスとは?

退職代行サービスとは、退職の意向を本人に代わって会社へ一方的に伝えるサービスです。本人は会社と一切、話をすることなく、その後の退職手続きも退職代行会社が行います。価格は30000円前後。

実はこのサービス、法律的にグレーゾーン。退職は「労働契約の解除」で関連交渉は法律事務にあたります。弁護士法では、弁護士ではない人が報酬を得る目的で法律事務を扱うことを「非弁行為」として禁じています。本人に代わって退職を伝えることも交渉の一部となる可能性があります。

そういったことを知ってかどうかは定かではありませんが、最近、「顧問弁護士が監修している」や「労働組合と連携している」というフレコミで展開をしている退職代行サービス会社が増えてきていますが、いずれにせよ本来は弁護士に依頼する必要がある依頼事項となります。

■「労働契約の解除」を代行してもらう本来の意義

本来「労働契約の解除」を弁護士に依頼するケースは、
・パワハラを受けている
・不当な条件で働かされている
・労働環境が劣悪
・辞めたいのに辞めさせてもらえない
などの際だと考えます。

上記のようなケースの際に、弁護士が企業と交渉をするということが本来の意義だと考えます。

しかし、現状の退職代行サービスでは、もちろん上記のような内容のときもあると考えられますが、依頼の多くが、
・思っていた会社や仕事内容と違った
・仕事が大変、つらい
・上司との人間関係が合わない
などのいわゆる一般的な退職理由で使用しているケースです。

 ここに退職代行サービスの意義はあるのでしょうか?

■退職することは悪いことではないが・・・

人材の流動化が叫ばれている昨今、退職することは悪いことではありません。一方で、人材の流動化にも、良い流動化と悪い流動化があるのではないかと考えます。

良い:成長性の高い業界・仕事へ、優秀な人がステップアップ
悪い:不満があるから転職をする、仕事ができない人が転職を重ねる

私は、過去に転職のエージェントとして、1年間に400人の方の転職の相談を受けた経験があります。不満が転職理由のすべてで、その不満を解消するために転職をするというケースの方は、その後も何度も転職を繰り返すというパターンになっていた方を多く見ました。その背景として、また同じように不満があると、その不満を理由に辞めてしまうということが想像できます。

このような人材の方がいくら流動化しても、経済が活性化するとは考えづらい。言い換えれば、安易な転職を容認するような流れを止める必要があると考えます。

しかし、退職代行サービスは、この流れを止めるどころか助長してしまっていると私は考えます。

■やり切る経験が仕事には必要

辞めるということが簡単にできてしまうことで、良い意味で、「踏ん張る」、「やり切る」という経験を経験できないことは、社会人としては大きなハンデになると考えます。

仕事は簡単なものではありません。プロとして対峙して、お客さんに満足してもらうためには、その道筋でいろいろな苦労をしながら、それを乗り越えることで成長ができる。自分ができないことや大変なことにトライしていかないとそこには到達できません。

アメリカで「天才賞」とも称されるマッカーサー賞を受賞したペンシルベニア大学心理学教授のアンジェラ・ダックワース氏。彼女が受賞したその研究成果をまとめた『やり抜く力(GRIT)』でこう言っています。

「どの分野であれ、人々が成功して偉業を達成するには、『才能』よりも『やり抜く力』が重要である。成功には『才能』の優劣よりも努力の継続、つまり、『やり抜く力』が決定的な影響を及ぼす」と示しており、「自分にとって最も重要と定めた目標に対して不変の興味を抱きながら、粘り強く取り組む『情熱』と、困難や挫折に負けずに努力を続ける『粘り強さ』がそろっていれば、誰もが目標を成し遂げられる」と説いています。

■自分で選んだことを棚に上げていないか?

忘れてはいけないのが、退職代行サービスを使って辞めようとしている会社は、自分で選んで入社を決めた会社であるということです。自分で選んで決めたのであれば、やり切ってほしいという想いがあります。

一方で、自分で決めたことでも間違うことはあります。間違えること自体は悪いことではない。しかし、間違ったのであれば、それをちゃんと伝えることが人としての道理ではないだろうか?

私の取引先企業でも、突然社員が退職代行サービスを使って辞めるということがありました。その企業は、中小企業ではありましたが、優良な企業。その経営者が「正直とても驚いた。嘘でもいいから退職の理由を本人から聞きたかった」という話がとても印象に残っています。

退職代行サービスを使って辞めるという行為は、自分で選んだということをなかったことにしているとも捉えられます。そうなると、次にまた、自分が選ぶことや選んだことの意味や価値が薄くなってしまう。
そういった人が増えて、世の中は本当に良くなるのだろうか? 

個人的な意見ではありますが、退職代行サービスがこれ以上広がらないことを切に望みます。


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