利上げ時期を探る日銀 | コンサルタントコラム | 中堅・中小企業向け経営コンサルティングの小宮コンサルタンツ
loginKC会員専用お問い合わせ

コンサルタントコラム

ホームchevron_rightコンサルタントコラムchevron_right利上げ時期を探る日銀

利上げ時期を探る日銀

小宮一慶のモノの見方・考え方
2024.10.22

27日の衆議院議員選挙まで1週間を切りました。
石破首相は首相就任直後の植田日銀総裁との会談後に「今は利上げの時期ではないと思う」と発言し、日銀の利上げをけん制しましたが、日銀は衆院選の選挙結果を考慮しながら、利上げの時期を模索していると思われます。
ただ、選挙直後の今月30日、31日の日銀の政策決定会合では利上げはないものと考えます。

一方、米国では11月5日に大統領選挙が行われ、その直後の6日、7日に中央銀行FRBのFOMC(公開市場委員会;日銀の政策決定会合に相当)が行われますが、こちらは利下げの可能性があります。今回はそのあたりのところを考察します。

日米の中央銀行とも、現状のインフレ率とともに、「中立金利」をかなり意識しているものと考えられます。中立金利とは、景気を過熱も冷ましもしない金利のことを言います。
日銀の政策審議委員の複数人は、講演などで「日本の中立金利は1%」という発言をしており、日銀内部では「1%」というのが、コンセンサスだと考えられます。
一方、米国の中立金利は「2.9%」というのが、FOMC参加者の平均値だと言われています。

まず、日銀ですが、日銀としては、現状の2%台が長く続くインフレ率や中立金利を考えれば利上げをしたいところでしょう。
ただ、先にも述べたように、石破首相が選挙前に日銀総裁との会談でくぎを刺したことや、株式や為替の相場が最近でも比較的大きく動くことなどを考慮して、10月末の政策決定会合では利上げは高い確率で行われないと考えられます。

一方、先にも述べたように、インフレ率がなかなか落ちないことや、中立金利を考慮すれば、日銀としては、現在0.25%を上限としている政策金利を上げたいと考えていることも間違いないと思われます。
石破首相は「デフレ傾向からの脱却」と言っていますが、日本はインフレです。
企業の仕入れである企業物価も前年比プラスが続き、10月1日には食品やペットボトル飲料で値上げされた商品も多く、また、ガソリンや電気、ガス料金も政府が補助金を出さなければならないほど高騰しています。
デフレ傾向などではありません。

そういったことを考えれば、年内最後の政策決定会合が開かれる12月18日、19日にも利上げが行われる可能性があります。
総選挙の結果に影響されることはあると思いますが、石破政権は現状より大きく議席を落とすものと考えられ、政府の日銀への影響力もその分下がるものと思われます。

また、米国では現状2%台のインフレ率に対し、政策金利が9月に0.5%下げられたものの、それでも4.75~5%と高く、中央銀行であるFRBとして、景気をある程度維持するためにも中立金利に政策金利を近づけたいと考えており、11月の大統領選直後の政策決定会合で利下げの可能性があります。
日本同様、12月半ばにもFOMCが開かれるのですが、年内の2回のFOMCで合計0.25%、あるいは0.5%程度の利下げが予想されます。

いずれにしても、来年も含めて、日本は利上げ、米国は利下げの傾向となると考えられます。

小宮 一慶

 


お問い合わせCONTACT US

コンサルティング、セミナー、KC会員についてなど、
お気軽にご相談ください。