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歴史に学び、他者に学び、そして常に先のことを考える

今週の「言葉」
2024.08.22

―緒方貞子『共に生きるということ』より

今週の「言葉」は、緒方貞子(1927(昭和2)年~2019(令和元)年)さんの対談本からの緒方さんの言葉です。緒方さんは日本人として、また女性として初の国連難民高等弁務官を1991年から2000年まで10年間勤め、湾岸戦争、バルカン紛争、ルワンダ虐殺などで大量に発生した難民の救済や治安維持のためにまさに現場で奔走された方です。2000年に国連難民高等弁務官を退任してからは、総理特別代表としてアフガニスタンの復興支援をしながら、2003JICA理事長に就任、開発援助、復興支援にも携わりました。2012年に退任した後もJICA特別フェロー、名誉顧問として国内外で活躍された方として記憶に残る人も多いでしょう。因みに曽祖父は五・一五事件で首相在職中に暗殺された犬養毅元首相です。さらに「緒方」の姓は夫のものですが、かの適塾の緒方洪庵先生に由来します。

緒方さんは本書対談で、今後の混沌とする国際情勢を鑑み、どう生きていくことが大切なのかを問われて「歴史に学び、他者に学び、そして常にやっぱり先のことを考えて暮らしていかなければ。自分のことだけではなく。」と語りました。また別の書籍では次のように語ります。

「いまは、政治家まで官僚化していますね。戦略的思考なんて考えたこともない、内向きの人ばかりになってしまったのではないですか。安定を壊さないように、なるべく現状維持に努める政治家か、そうでなければ、先のことをまったく考えずに発言して、安定を壊してしまう政治家がいるだけです。外務省も細分化されていますから、大きな考え方が組織から出てくることはないですよ。」(2015年当時、出典:『緒方貞子回顧録』岩波現代文庫)

現在自民党総裁選の話題が賑わっていますが、考えさせられるところです。一方、我々民間のビジネスパーソンにも同じ指摘がされてもおかしくない状況があります。

「戦略的思考」、それはまさに「生き方」であると別のコラムで書いたことがありますが、歴史に学び、長期的な視点をもって、緒方さんのように強烈な実践からしか生まれないアートのようなものです。緒方さんの警句、示唆に似たことを安岡正篤先生も語っています。リーダー研修等でよくこのことに私も触れるのですが、すなわち明治以来の思考の三原則「長期的に考える・多面的に全体を考える・根本的に考える」ことをしなければ、諸般の問題を解決することは能わないとの警句。さらにはかつて英国の保守思想家エドモンド・バークが語った「伝統や祖先を捨てて些かも省みない人々は、子孫に思いを致すこともしないものです」(『フランス革命の省察』)との指摘にも通じます。

何れの警句、指摘も残念ながら我が国の現状を予見したものとなっているのではないでしょうか。


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