新聞やニュースでも少しずつ取り上げられることが増えてきた「6G」。6Gになると世の中はどう変わるのかについて個人的な視点でポイントを整理してみたことをお伝えできればと思います。
■6Gとは?
現在のスマホの画面のアンテナマークの横に4G、もしくは5Gと表示されていますが、これは遠隔移動通信システムの「世代」を表しています。いわゆる携帯電話での通信システムの世代と考えて頂けるとわかりやすいかと思います。
世代が上がるとできることが増え、2Gでメールができるようになり、3Gでは海外でも通話ができるようになり、4Gではネットが使えるようになりました。そして、5Gでは通信速度が大幅にアップし、長編映画をダウンロードする際、4Gでは8分かかっていたものが、5Gではわずか5秒に。また5Gは、多数同時接続が可能で、かつ通信が遅延する時間が大幅に短くなったことによって、複数のドローンや機械をスムーズに動かすことなどが可能になりました。
6Gは第6世代ということになりますが、6Gの議論はまだ始まったばかりで、5Gの次に来る技術として研究・開発されているという状態で、漠然としています。また、6Gに関する国際的な基準がまだ存在していないため、現時点ではどういった技術になるかが明確にはなっていないのが現状です。
そこで日本では、総務省やドコモが中心となり、その基準作りや研究を行っています。その中でドコモが提唱している「2030年ごろまでに6Gで実現すること」として、以下のものを挙げています。
1.超高速・大容量通信
最大100Gbpsを超える超高速通信や、100倍以上の超大容量通信を実現する
2.超低遅延
E2E(End to End)で1ms以下の超低遅延通信を、常時安定した状態で実現する
3.超高信頼通信
特に産業向けでの幅広いユースケースにおいて、通信のセキュリティと安全性を高め、信頼度99.99999%の通信品質を実現する
4.超カバレッジ拡張
陸だけでなく、空・海・宇宙などあらゆる場所での移動通信サービスを実現する
5.超低消費電力・低コスト化
持続可能な社会を実現するために、移動通信システムにおけるネットワークや端末の消費電力とコストを大幅に低減させる
6.超多接続&センシング
平方km当たり1,000万デバイスという究極の多接続や、高精度な測位およびセンシングを実現する
とありますが、これだけだとなかなか理解しづらいですよね。そこで、私の視点で特徴をピックアップしてみたいと思います。
■特徴は『超』=『5Gのパワーアップ』
6Gの大きな目玉が、「1.超高速・大容量通信」+「2.超低遅延」です。見て頂いてわかるように「超」とついたことがポイントです。
「超」といえばドラゴンボール。サイヤ人からスーパーサイヤ人になった変化を思い出して頂けると「超」のすごさが想像しやすいかと思います。
実際、6Gでは、ネットワークの通信速度は人間の神経の反応速度を上回るレベルに達すると言われています。
そうなると、どうなるか?
SF映画や小説・アニメで起こっていたことが現実になる可能性があります。具体的には、遠隔での触覚・味覚・嗅覚の伝達・共有ができるようになります。例えば、テレビショッピングで商品の手触りや材質感などを、映像で見ている人に伝えるといったことが可能になるのです。
スペインのバルセロナで行われた世界最大級のモバイル関連見本市「MWC」という展示会で、プロのミュージシャンが演奏したサックスの動きをセンサーで即時にデータ化して、通信を経由して、遠隔で離れた素人の演奏者が、プロのミュージシャンの動きをセンサーで感じ取り、ほぼ同時に同様の演奏をするといったデモンストレーションも行われていました。
さらには、遠隔で離れた通話相手が、目の前に実物とほぼ同じに見える3Dホログラム(レーザーを使って立体画像・映像)でリアルに投影され、会話をリアルと変わらずに行うということが可能になります。そうなると、ロボットや3Dホログラムをアバターとして利用して、通勤や通学をする未来が訪れるかもしれません。
■もうひとつの特徴は、『範囲の拡張』
6Gのもうひとつの目玉が、通信範囲の大幅な拡張です。「4.超カバレッジ拡張」とあり、ここでも「超」がついています。どのくらい拡がるかというと、地球上のへき地や海上はもちろん、宇宙空間でも通信ができるようになるのです。
そうなると、どうなるか?
このことが実現できることによって、山間地や離島などでもクルマの自動車運転が実現でき、災害により地上ネットワークが使用できなくなった場合も、被災地上空から通信を行うことで必要な情報や機能を維持することができるようになります。
また、上空や海上・海中でも通信が途切れないため、無人での輸送・建設工事・工場運営などが可能になると言われています。
■遠隔通信システムが変わるとビジネスに大きなインパクト
遠隔通信システムの世代が変わると、ビジネスに大きなインパクトを起こします。
3Gでは、海外でも携帯電話が使えるようになり、ビジネスのグローバル化を促進させました。また、4Gでは、スマホが開発され、一人一人がネットにつなげられる状態になり、SNSが発展し、様々なビジネスを生み出しました。5Gになり、ネットフリックスなどの映像サブスクモデルが登場するとともに、自動運転やAIの活用といった新たなステージの可能性が見えてきました。
そうした中、6G技術の開発には世界各国で投資が相次いでいます。
・EUは21~27年にかけて9億ユーロ(21年の為替レートで約1200億円)の投資
・韓国は21~25年に2000億ウォン(200億円)の投資。
・日本は研究開発を支援する662億円の基金を新設。
2030年ごろの実現を目指す6G。どんなインパクトをビジネスにもたらすのか楽しみですね。