私が企業の損益分析を行う時に、重視すべき指標の一つとして「1人あたり粗利益」があります。
なぜ重視するかというと、販管費にある人件費をまかなう原資は粗利であるため、「1人あたり粗利」が1人あたり人件費よりも高ければ高いほど収益性が高いといえます。一方で、「1人あたり粗利」が1人あたり人件費以下であれば当然営業赤字ですし、1人あたり人件費を上回っても、人件費以外の経費をまかなうことができなければ、これも営業赤字となります。
このため、損益改善に向けては、いかに「1人あたり粗利」を高めるかがポイントとなります。
この「1人あたり粗利」は「全社粗利÷社員数」で算出しますが、よく「ここでの社員数は全社員ですか?もしくは営業社員だけですか?」と質問を受けることがあります。
結論としては、全社員と営業社員の両方を算出すべきだと考えています。
1人あたり人件費や諸経費に対応する粗利を獲得できているか確認するには、全社員の「1人あたり粗利」の確認が必要です。
一方で、商品・サービスを実際に売って売上・粗利をあげるのは営業社員ですので、営業社員ごとの粗利が十分かどうかを確認するためには、営業社員の「1人あたり粗利」の確認も必要です。
経営のなかでは、営業社員の「1人あたりの粗利」の目標値を設定し、目標と実績の乖離を確認し、PDCAをまわしていくことが必要です。
この時の「1人当たり粗利」は、次のように設定していきます。
①目標とする営業利益と販管費の計画値を設定し、「目標営業利益+販管費計画値」で目標とする全社粗利を設定する。
②「目標粗利÷営業社員数」で営業社員の「1人あたりの粗利」の目標値(平均)を設定する。
③目標値(平均)を参照しながら、個別の営業社員が担当するお客さま、案件等を踏まえながら営業社員別粗利の目標値を設定する。
④営業社員別粗利の目標値の総計が①で設定した全社粗利目標値となるように調整する。
上記の②、③の検討と同時に考えないといけないのは、「1人あたり粗利」のつくり方の方針です。営業社員の「1人あたり粗利」を分解すると、「商品・サービスの販売あたり粗利×販売数」となります。ここで、「商品・サービスの販売あたり粗利」、「販売数」のいずれを優先するかを決めることが、「1人あたり粗利」のつくり方の方針です。どちらかを優先する時は、もう片方が劣後することもあります(例えば「販売数」を優先する時は、「商品・サービスの販売あたり粗利」が劣後することがあります。)
そのうえで、「商品・サービスの販売あたり粗利」、「販売数」の具体的目標値も設定できるとベストです。
実際には、「1人あたり粗利」の目標値を設定するものの、そのつくり方については成り行きまかせで、方針もなければ、「商品・サービスの販売あたり粗利×販売数」の目標値もないことがよく見られます。
そのような目標設定では、「「1人あたり粗利」が達成した、達成していない」だけのチェックとなり、目指していた「1人あたり粗利」のつくり方通りにいったのか、いかなかったのかのチェックができません。
損益改善や、更なる向上に向けて、営業社員の「1人あたり粗利」の設定と、「商品・サービスの販売あたり粗利×販売数」の方針と目標値設定をご参考として頂ければと思います。