(本田宗一郎『私の手が語る 私の手が語る: 思想 技術 生き方』より)
今週の「言葉」は、本田技研工業(世界のHonda)の創業者、本田宗一郎さん(1906年〈明治39年〉 – 1991年〈平成3年〉)の名著から引用しました。
先人たちが命がけで過去にしてくれたように、日本を物心両面で豊かな国として次世代にバトンを渡すために、これから何をすることが大切なのかを学ぶとき、民間人として偉大な功績をあげた人物から学ぶことが近道であろうと信じています。具体的には、松下幸之助(現パナソニック創業者)さん、出光佐三(出光興産創業者)さん、稲盛和夫(京セラ、KDDI創業者)さん、中條高徳さん(アサヒビール大復活時の経営者)、そして今回取り上げた本田宗一郎さん等、昭和一桁以前生まれの先人から学ぶことが重要だと強く感じています。
なぜならば、日本の経済的成長の停滞と精神的伝統と誇りが失われつつある現状の萌芽、或いはその原因について、上記に挙げた皆さんは一様に「このままいけば必ず日本は衰退する」と警鐘を鳴らしていました。その代表的な言葉が今回取り上げさせて頂いた本田宗一郎さんの言葉です。エンジニアでもある本田宗一郎さんは厳しくも愛情を注がれた当時の従業員から「おやじ」と呼ばれていましたが、Hondaの企業精神の根幹には常にある思想哲学があったようです。その代表的な言葉として「理念なき行動は凶器であり、行動なき理念は無価値である。」は有名ですね。この言葉は、プロイセン(現ドイツ)の哲学者イマヌエル・カント(1724年 – 1804年)の「知識なき行為は暴力であり、行為なき知識は空虚である」に似ています。
本田宗一郎さんは次のようにも語っています。
「変転きわまりない時代にあって、根本的に変わらないものが一つある。それは何かというと、人の心というやつだ。飛躍した言い方になるが、思想であり、その根っこの哲学である。しっかりした思想と哲学をもたぬ企業は、これからも潰れてゆくだろう。」
「工場は組織だけで動くものではなく、基本は目に見えないカタチで働く、人間の一人ひとりに流れている思想である。」
無形性の価値、目に見えないものにこそ価値が存在することは、正しい考え方を修養し、世の中を動かしている真の原理原則(例えば因縁因果、自因自果、或いは天地人など)を学び実践しなければなかなか理解が難しいかもしれません。唯物論(目に見えるものの価値しか認めない)では、到底見えません。経営もマーケティングも、人財育成も、この無形性の価値(哲学、思想、信念)が統合された使命感から行われるものでなければなりません。ピーターの法則(人間はその無能さが証明されるまで上昇する)がなぜ政治や企業内で起こるのか。それはスキル倒れであることは多くの人々がみてきたことです。
責任ある立場になればなるほどやはり、「しっかりした思想と哲学をもたぬ企業は、これからも潰れてゆく」ことを肝に銘じたいものです。自らの知行合一あるのみです。