日本は「第三次石油危機」を変革の契機に | コンサルタントコラム | 中堅・中小企業向け経営コンサルティングの小宮コンサルタンツ
loginKC会員専用お問い合わせ

コンサルタントコラム

ホームchevron_rightコンサルタントコラムchevron_right日本は「第三次石油危機」を変革の契機に

日本は「第三次石油危機」を変革の契機に

経営のヒント
2026.05.11

2月末から始まったアメリカとイランの軍事衝突は、未だ収束の兆しが見えません。当初一喜一憂していた株式市場は、状況を楽観視しているのか足元では最高値を更新していますが、事態はそう単純ではないように見えます。実際、イランや周辺国の石油関連施設が次々と破壊されており、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、復旧に最長2年を要すると発言しています。またペルシャ湾内での機雷敷設の情報もあります。そのため、たとえ停戦しホルムズ海峡が開放されたとしても、中東からの石油供給の回復には時間がかかるかもしれず、原油価格の高騰は長期化する可能性があります。

この状況に対し日本では、政府が国家備蓄・民間備蓄の放出を決定するとともに、ガソリン価格を抑制するため補助金を支給し、1リットルあたり170円程度に抑える方針を発表しました。また、代替ルート活用や米国産原油の輸入等により、来年の年明けまでは枯渇を回避できるメドを立てたとしています。

少なくとも短期的な石油枯渇やそれによる混乱、価格高騰などは避けられそうな状況ですが、それだけで良いのでしょうか。

石油備蓄は現状200日分以上の水準となっていますが、有限であることに変わりはなく、200日後に事態が好転しているとは限りません。また、代替輸入先があると言っても、例えば米国産原油を常識的な価格で購入できるのか、もしかすると「ディール」の材料になる可能性すらあります。このままの状況が数カ月後にも維持できるかどうか見通せない中では、節電などエネルギー消費の抑制を始めておくに越したことはないと考えます。

しかし、より深刻だと考えるのは、今回の石油高騰を受けても、短期的に現状維持を志向するあまり、中長期の変革に向けた議論が進んでいるように見えないことです。例えば1970年代のオイルショックでは、原油価格の高騰を経て企業は省エネ技術を高め、日本の産業が高付加価値化してゆく一つの契機となりました。また、石油依存からの脱却を目指し、太陽光など代替エネルギー開発を掲げたサンシャイン計画は、現在の脱炭素政策の源流となりました。

もちろん、ガソリンなど石油製品を直接的にエネルギー源や素材とする産業は多数あり、また間接的には電気やガス等を通じ国民全員がその影響を受けるため、短期的なショックを和らげることは重要です。しかし、備蓄の放出や補助金で現状維持を優先し、中長期の産業構造やエネルギー構成、安全保障などを含めたあるべき姿を議論しなければ、将来的に変革を遂げた他国との間で競争力を失い、「ゆでガエル」のような状態になってしまうのではないかと危惧します。例えば欧州では、2022年のウクライナ侵攻によるロシア産ガスの供給停止や、今回の中東産原油の途絶危機といった経験をふまえ、経済性・技術的制約・地政学リスクの三者をバランスしながら満たすエネルギーミックスを模索しているといいます(3月24日付 Oil & Gas Journalより)。気候変動対策としての再生可能エネルギー一辺倒ではなく、上記3つの観点にも立脚しながら、原子力や石炭等も含めたエネルギー構成のあるべき姿を考えているのです。

今回の「第三次石油危機」を契機に、日本においても、例えば再生可能エネルギーや原子力をどう位置づけるのか等、改めて国として長期的にあるべき姿を議論する必要があるのではないかと考えます。


お問い合わせCONTACT US

コンサルティング、セミナー、KC会員についてなど、
お気軽にご相談ください。