AIを使って経営理念やミッション・ビジョンを整理する場面が増えてきました。実際に、社内で出てきた言葉やアイデアをAIに入力すると、それらしく整った文章が返ってきます。論理も通っていて、一定の納得感もある。こうした体験をされた方も多いのではないでしょうか。
ただ、ここで一つ引っかかるのは、「これはどこまで自分たちで考えたと言えるのか」という点です。AIが出してきた文章を見て、「たしかにそうだ」と思える。その感覚はある一方で、「本当に自分たちの言葉なのか」という違和感も、どこかに残ることがあります。
「AIが考えたのではなく、自分たちが考えていたことを整理しただけだ」と言ってしまえば、それも一つの見方です。ただ、その整理のされ方によって、自分たちの思考が規定されてしまっている側面も否定はできません。だからこそ、この違和感を曖昧にせず、きちんと扱うことが重要だと思います。
私たちは「意味」と「意識」という言葉でこの違いを捉えています。ここでいう「意味」とは、言葉の額面通りの情報や、論理的に整合した内容のことです。一方で「意識」とは、その言葉に込めた思いや覚悟、なぜそれを選ぶのかという内側の動機を指します。
AIが得意なのは、「意味」の領域です。筋の通った戦略や、合理的な選択肢を提示することは、これからますます高度になっていくでしょう。しかし、経営において本当に問われるのは、「なぜその戦略を取るのか」「自分たちは何を大切にするのか」という「意識」の部分です。
ときにその選択は、効率的ではないかもしれません。矛盾やジレンマを抱えることもあります。それでも「うちはこれをやる」と決める。その意思こそが、組織の軸となり、実行を支える力になります。
AIを活用する上で重要なのは、アウトプットそのものよりも、そのプロセスです。どのような前提で問いを立てたのか。出てきた答えに対して何を感じたのか。違和感があったのか、それとも納得したのか。そして、それを踏まえてどのように問いを投げ直したのか。
このプロセスを経てはじめて、「意味」に「意識」が乗ります。逆に言えば、このプロセスを省いてしまうと、整った言葉ではあっても、自分たちのものとは言い切れない状態になるでしょう。
AI時代になったことで、経営の本質が変わったというよりも、むしろこれまで大切にしてきたことが、よりはっきりと問われるようになったのだと思います。経営は人が人を動かす営みです。だからこそ、「意味」を整えるだけでなく、「意識」を引き受けることが不可欠です。
その違和感から目をそらさずに問い続けられるかどうか。そこに、これからの経営の質が表れてくるのではないでしょうか。