ソフトバンクとPayPay、三井住友カードが、セブン&アイ・ホールディングスに最大3000億円規模を出資する方向で協議していると報じられました。今回の記事で私が気になったのは、今後の「経済圏」の動向です。
経済圏は、もともと楽天ポイント、WAON POINT(イオン)、dポイント(ドコモ)、Vポイントなど、ポイントを軸としたつながりとして語られることが多いものでした。しかし現在は、決済、通信、EC、金融などを共通IDでつなぎ、顧客に複数のサービスを継続して利用してもらう仕組みへと広がっています。お客さまとの接点を増やし、より深く関わることで、顧客生涯価値(LTV)を高める戦略です。
私は出張を楽天トラベルで手配していることもあり、スマホ以外は楽天経済圏の住人です。最近は経済圏をつくろうという動きが活発で、楽天やPayPayのような総合型だけでなく、JR東日本やJAL、ANAのように、鉄道や航空を起点とする特化型の経済圏も勢力を強めています。
この経済圏という視点で考えると、コンビニは大きな可能性を持っています。生活スタイルにもよりますが、コンビニは小売業の中でも、利用頻度が最も高い業態の一つではないでしょうか。ネット通販や飛行機を毎日利用する人は多くありませんが、コンビニには毎日のように立ち寄る人がいます。なかでもセブン‐イレブンは、2万店を超える店舗網を抱え、経済圏の核になり得る大きな可能性を秘めています。
セブンも、経済圏づくりに取り組んでこなかったわけではありません。nanaco、7iD、セブンマイルなどの仕組みがあります。しかし、私も含め、そのメリットをそれほど実感していない消費者は多いのではないでしょうか。毎日のようにセブン‐イレブンに行くものの、決済はPayPayという人も少なくないでしょう。
セブンはこれまで、独自の商品やサービスを自社主導で磨くことで成長してきました。セブンプレミアムやセブン銀行、nanacoは、その象徴です。だからこそ、他社の経済圏と本格的に組もうとする今回の動きは、セブン&アイが大きく変わり始めた象徴に映ります。
2019年に7payが不正利用問題によってサービス終了に追い込まれた経験を考えれば、デジタル分野で外部の専門企業に頼る判断は合理的です。PayPayの決済、三井住友カードの金融、ソフトバンクのAIを取り込めば、自前で一から構築するより、はるかに速く変革を進められます。PayPay側にとっても、巨大なリアル店舗網と日常の購買接点を得られるため、楽天などに対抗する有力な基盤になります。
ただ、最近のセブンを見ていると、デジタル分野だけでなく、コンビニという本業においても、以前ほど独自の新しい価値を生み出せていないように感じます。小売業の常識を覆し、「さすがセブンだ」と言われるようなイノベーションを、かつてのように生み出せるのでしょうか。それとも、数ある小売企業の一つにとどまってしまうのでしょうか。
創業者の伊藤雅俊さん、中興の祖である鈴木敏文さん亡きあと、今回の提携がセブン再成長の転機になるのか、注目したいと思います。
平野 薫