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AI時代に残る、経営のOS ―― 矛盾を越える力

経営のヒント
2026.07.13

お読みいただき、ありがとうございます。少しだけ、最近考えていたことにお付き合いください。

たくさんの経営書を並べてみて意外だったのは、時代も国も違う人たちが、驚くほど同じことを言っていた点です。まず「何のためにやるのか」という軸を定める。限られた力を一点に集中する。顧客から考える。決めたことをやりきり、振り返る——。こうした共通点は、流行り廃りのある「アプリ」ではなく、その下でずっと動き続ける「OS」のようなものだと感じます。

AIがどれだけ賢くなっても、何に集中し、誰のために、なぜやるのかを決めるのは人間の側です。AIは答えを速く出してくれますが、問いを立てるのはこのOSの仕事です。むしろ道具が強力になるほど、土台の善し悪しはそのまま増幅されます。粗い問いを渡せば、粗い答えが大量に返ってくるだけです。だからAI時代こそ、この古いOSの価値は下がるどころか、静かに上がっていくのだと思います。

一方で、読み比べると矛盾も次々に出てきます。例えば柳井さんは「安いから高品質は無理だ」というトレードオフの枠では考えていません。むしろ、そのトレードオフを超克してみせることでこそ、誰も並べない圧倒的な立場に立てる、とおっしゃっています。ところが面白いのは、これと正反対に見える「すべてで一番にはなれない、何かを捨てよ」というハーバードの本の主張も、また真だということです。トレードオフを越えにいくのも真、トレードオフを認めて選ぶのも真。どちらかが間違っている、という話ではないのです。

経営者の学びとして面白いのは、まさにここからだと思うのです。相反する二つが、どちらも真でありうる。そのとき問われるのは、「どちらが正しいか」を裁くことではなく、自社は今どちらの局面にいるのか、そしてこの矛盾を一段高いところでどう抱えるか、です。潔く捨てて選ぶのか、前提ごと超克しにいくのか。二つの真を戦わせて片方を消すのではなく、両方を握ったまま自社なりの答えをつくる——これが止揚(アウフヘーベン)の力ではないでしょうか。

現場の経営は、いつも「あちらを立てればこちらが立たず」の連続です。短期と長期、攻めと守り、集中と探索。その答えは本の中ではなく、自社の文脈の中にしかありません。だから本とは、正解を教わるものというより、良い問いと、越え方のヒントをもらうもの、くらいの距離で付き合うのがちょうどいい気がしています。

AIに任せられることは、これからも増えていきます。それでも、矛盾を引き受けて、自社なりの「第三の答え」をひねり出す。その一番人間らしい仕事だけは、経営者の手に残り続けるのだと思います。

新宅 剛


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