「人間は負けたら終わりなのではない。辞めたら終わりなのだ。」
― アメリカ第37代大統領、リチャード・ニクソン
長年、アメリカ史の中ではジョン・F・ケネディ元大統領に興味を持ち、色々な本を読んできました。
その中でケネディ氏の政敵、ライバルであったニクソン元大統領に興味をもち、こちらも色々と読んできたのですが、ケネディ氏と違った意味で大変興味深い人物です。
歴史の中におけるニクソン氏は決してよい評価は受けていません。特にウォーターゲート事件(民主党本部への盗聴関与を隠蔽しようとした事件)にて大統領を辞任してしまったことは最大の汚点でした。
しかし、ベトナム戦争の終結、米ソ和解の推進(デタント)等、冷戦時の緊張緩和に努めた功績は小さくありません。特に米国と中国の国交を回復したことが、その後の世界政治に与えたインパクトは、現代に至るまで非常に大きなものがあります。
富裕な家に生まれ、スマートであり、人気が高かったケネディ氏と違い、ニクソン氏は生涯コンプレックスのかたまりのような人物でした。貧しい家に生まれ、刻苦勤勉して弁護士となり、上院議員、副大統領と順調に出世しました。しかし、1960年にケネディ氏との大統領選挙に敗れ、一時期は政治生命を絶たれたと思われていました。
ところが、その後のベトナム戦争の混乱の中復活し、1969年に大統領となりました。その後の栄光と挫折は前述の通りです。
私がニクソン氏に驚嘆するのは、米国史上残るスキャンダルで辞めた後も、ニクソン氏は政策発信を続け、時には米国の外交に対して影響力を発揮していったことでした。特に(これは歴史的評価として難しいところはありますが)1989年の中国・天安門事件後の米国と中国の和解に果たした役割は小さくないと思います。
確かにニクソン氏には褒められない点も多々あったかもしれませんし、多くの挫折・失敗を味わったと思います。ただ、彼のすごいところは、そうした挫折・失敗に直面してもくじけることなく、努力し続けたことかなと思います。その点がケネディ氏と違った魅力をニクソン氏に感じるところです。
私達の人生においても、時にはうまくいかず、挫折・失敗を味わうことはあります。
しかし、それによって終わりということではなく、そこから辞めない限りはまだ再起できる可能性があります。それを信じて、努力し続けることが大事なのではないでしょうか。
ニクソン氏の冒頭の言葉と、人生の歩みは、そのことの学びとなります。