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稲盛さんに学ぶ経営理念

経営のヒント
2022.09.23

今回は、稲盛和夫さんの教えから、経営理念について考えてみたいと思います。

稲盛さんは、「全従業員の物心両面の幸福」を経営理念の第一に掲げています。JALの再生においても、経営理念を「全社員の物心両面の幸福」にされたということです。再生の段階にあるJALにおいて、経営理念を従業員軸にすることに反対の声もあったようですが、信念をもって変更されたということです。

 

稲盛さんは、「心」という書籍も執筆されていらっしゃいます。「人生は自分自身が描く心の通りになる」とおっしゃられている方なので、心の大切さ、心が幸福であることの大切さを誰よりも実感されていらっしゃったのだと思います。

それではなぜ「心物両面」ではなく、「物」を先にした「物心両面」なのでしょうか。

 

私は、ここに従業員さんの状況を思いやる稲盛さんのやさしさを感じます。

マズローの5段階欲求にもあるように人の欲求には段階があるとされます。心の幸福に至るためには第一から第四までをカバーしている必要があり、そのためにまずは物の豊かさ充実の環境を提供して生活水準の安定や働く周りの仲間との関係も含めた帰属意識などを高めていただき、その先の自己実現・心の幸福を実現してもらいたいという姿勢なのではないかと思うのです。

 

やはり人間、生きていく上で最低限の部分については経済的な土台(「物」の土台)が先に立つのではないかと思うのです。働く喜びの段階に到達する前に、足元の生活が苦しい時には、なかなか志が高い理念を自分事とすることが難しく感じます。私自身も、特に10代、20代の時は比較的経済的に苦しい時代を過ごしました。その時に、なかなか高い志を考えることが難しかった記憶があります。

 

志の高い経営理念やビジョンは、働きがいや志が高まった社員さんにとってみればしっくりくるものですが、そこに至らない方々にとってみればまだ自分事に落とし込めないものでもあります。

 

経営理念やビジョンを信じて全社一丸で突き進んでいただくためには、弾み車のようになかなか進まない段階が必要ですし、それはほぼすべてのお客さまへのコンサルティングの現場で実感します。そのような段階においても、全従業員の物心両面の幸福を本気で経営理念に入れることによって、どのような心の段階にいる従業員さんにとっても自分事に落とし込める経営理念になり得るのだと思います。

 

 

この稲盛さんの経営理念については、心の優しさから来る部分と実際に実利的な従業員さんの心の段階に向き合った経営理念であるということもできるかもしれません。

 

私自身も、最近4人めの子供が生まれました。これからの日本の将来を考えて、大家族を持った上で家族の物心両面の幸福を実現させていかなければなりません。

様々な不安はありますが、実際にこのような私が働く会社が従業員としての私の物心両面の幸福を目指した経営をしてくれていたとしたならば非常に心強いと感じる瞬間でもあります。

 

従業員としての私が、腹の底から会社のために貢献しようと思うことは私自身の心の段階によるものだと思います。そして、いかなる心の段階においても腹の底から力を出せる経営理念が全従業員の物心両面の幸福であるようにも改めて思うのです。

 

私は、お客さま第一として経営理念を考えたときに、生成発展に貢献すること(目の前のお客さまで貢献することの連鎖の先に生成発展があると考えます)、及びその企業らしさ(その企業の歴史などを踏まえて紡ぎ出された人間らしい部分やその企業の強みの一部になっているもの。パナソニックであれば水道哲学、ソニーであればクリエイティビティーのようなもの)が含まれていることが大切だと思っています。

 

一方で、新入社員さんも含めたその会社で働くすべての従業員さんが会社の目指す方向性と腹の底から一致した考えを持てるためには、これに全従業員の物心両面の幸福という要素が含まれていることも非常に重要なのではないかと思うのです。

 

また、「全」従業員の、という部分については、従業員さんが良い仕事に向かってそれぞれの段階ではあるものの正面から向き合っていることが前提になるのだと思います。お客さまを大切にして、周りの仲間を大切にして、自分のできるレベルで工夫をしてそれをさらに伸ばそうとしている姿勢があること、その姿勢がある限り全従業員さんが物心両面の幸福を実現するために会社は貢献できるのだと思うのです。

 

私はコンサルタントとして経営者の方々を中心として伴走する仕事をしていますが、自社においては従業員の立場でもあります。そこが、ただ働きやすく居心地の良いだけの会社であれば甘えが出てくるでしょう。

 

だからこそ、良い仕事を軸にし頑張っている人を評価することによって「物心両面の幸福」を実現する誠実な経営理念を持った会社であれば、発展し従業員さんも幸せでいるのだと思うのです。それこそがドラッカーの言う特有の使命を果たし、働く人を生かし幸せにする会社足り得るのではないかと考えます。


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