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北の国から考える創業者精神の継承

経営のヒント
2022.11.11

仕事でこの8年間、しばしば北海道に赴く機会があります。飛行機から広大な耕地が広がってるのを眺めるたびに、あの大ヒットドラマ「北の国から」の名シーンの数々と共に、先人の苦労に畏敬の念を覚えます。昨年はその主人公を演じた名優田中邦衛さんの訃報に触れました。道内のニュースでも富良野のゆかりの地を紹介する等報道されていました。休みを使って私は改めて幼いころに観た「北の国から」をその第1話から鑑賞し直しました。私の故郷である岩手ではしばしば再放送されていて、当時小学生だった私はジュンやホタルの気持ちで観ていましたが、今となっては親の立場、或いは北海道の企業様の未来に責任を持つ人間として観ました。

 

その中でも、第16話、笠松のじいさん(役:大犮柳太朗さん)が亡くなった回での大滝秀治さんの言葉が最も心に残っています。(この第16話の説明:酔っ払って橋から落ち、笠松じいさんが死んだ。笠松じいさんと開拓の苦労を共にした清吉(大滝秀治さん)の言葉が、純(吉岡秀隆さん)の心に焼きついた。フジテレビオンデマンドの説明より)。開拓時代を共にした愛馬を売ったその日、笠松のじいさんは朝から酒を煽り、泥酔してその晩、橋から落ちて亡くなったのだった。

 

笠松のじいさんの通夜にて、心無い回想を言い合う息子たちを前にセイさん(大滝秀治さん)が語ったこの言葉。

 

1尺がわずかか?1町おこすのに2年かかった。そういう時代を生きた人間の気持ちが分かるか?

 

土地を棄てた人間が土地を守り続けて残った者にとやかく言う資格はない。おめえらだけじゃねえ、みんな忘れとる、功績者の気持ちを誰もが忘れとる。1町おこすのに2年もかかった。その功績者の気持ちを誰もが忘れとる。とっつあんは確かに評判が悪かった。でもみんな昔は仏のきねじ(笠松じいさんのこと)、そう呼んどったよ。そんな時代も昔はあったんだ。それがどうして今みたいになったか!みんなとっつあんの苦労を忘れちまったからだ。忘れなかったのはあの馬だけだ。あの馬だけがとっつあんを分かっておった。その馬を手放したとき、その馬を売った時(そこで言葉詰まる)」

 

因みに1尺=約30cm1町=約1万㎡。

 

「功績者の苦労をみんな忘れとる。」会社で言えば創業者及び創業メンバーのことです。創業者ほど苦労した人間は殆どにおいてその会社にはいません。

私のお客さまである北海道の建設会社さんにはその創業者の精神を「創始者の遺訓」として6条にわたって次世代に遺されています。大正時代の創業で今年100年の齢を迎えました。日本人の根本精神であった「融和と団結」から始まり、その中心にあるメッセージは「世の為人の為に尽くせ」です。その他に「敢闘と真実」という言葉もあります。敢闘とはチャレンジすること。勇敢に戦うこと。何と闘うのか、真剣に闘った先に見えるのが真実、この言葉は重い。

豊かになって生まれ育った私たち以降の世代にはその真の光景が見えにくい。そのくらい重いものであることを次世代にどのように伝承していくのか。本気で何かと向き合ったその先に初めて真実が見える。指先で検索して得た二次情報(誰かによって意図的に編集された情報)を真実という現代の浅墓さ。

 

今の時代には忘れ去られた大切な人生、仕事の本質がこうした先人の言葉に表されているように思えてなりません。精神とは企業で言えば理念、個人で言えば価値観です。それは目に見えないがゆえに、言語化してあっても、終始人間から人間へと伝承していくものなのです。デジタルでは伝わらないものなのです。


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