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「お客さまは神様」の本当の意味

知恵のバトン
2022.11.08

すっかり朝夕寒く感じられる季節になり、令和4年も残り1か月と数週間となりました。

コロナ禍も少しずつ社会がこなれて来て、一方的な三密回避、オンライン・リモート推奨の要求から少しずつ五感による人間感覚への寄り戻しがここそこで観られるようになってきました。デジタルでは補えない、人間が充たしたい欲求、つまりリアルな場を通じた価値交換の空間や関係性は今後も当然ながらあり続けます。

 

先日、とある新聞社の「リスキリング」に関する記事を読んでいた際に、驚くような記述がありました。「この2人によって、ビジネス界においては顧客の立場が上がりすぎてしまい、いまや神様たる顧客にはどんな横暴も許されます。」と。その二人とは…。三波春夫とピーター・ドラッカーの二人こそ「お客さまは神様」という誤解を生んだ張本人、という記述だったのです。直接の言葉や文献にあたっていない浅墓な指摘だ、と直観的に感じてしまったのですが、日本国民に宗教観が薄まっているから「神様」の概念がモンスター顧客に繋がるのか、それは分かりません。主客一体が私たちの国では大切にされてきましたが、そうしたことは国家教育、なかんずく個人の道徳の問題です。因みに三波春夫さんは生前のご著書で次のように語ります。

「しかし、振り返って思うのは、人間尊重の心が薄れたこと、そうした背景があったからこそ、この言葉が流行ったのではないだろうか?私が舞台に立つとき、敬虔な心で神に手を合わせたときと同様に、心を昇華しなければ真実の藝は出来ない―――と私は思っている。」「われわれはいかに大衆の心を掴む努力をしなければいけないか、そしてお客さまをいかに喜ばせなければいけないかを考えていなくてはなりません。お金を払い、楽しみを求めて、ご入場なさるお客さまに、その代償を持ち帰っていただかなければならない。」(以上、三波春夫著『歌藝の天地』PHP研究所より一部抜粋)

 

Amazonに代表されるネット流通隆盛の最中にあって、実店舗で業績を伸ばし、地域の顧客に支持され続けているスーパーマーケットが在ることをご存知でしょうか。流通業の皆さんには有名ですが、例えば米国ではスチュー・レオナード、日本ではヤオコーさんが有名です。スチュー・レオナードの入り口には次のような約束が刻まれています。

▼スチュー・レオナードの約束

Rule 1 The Customer Is Always Right!

「ルール1:お客さまは常に正しい」

Rule 2 If The Customer Is Ever Wrong, Reread Rule 1.

「ルール2:お客さまがもし間違っていると感じたら、ルール1にもう一度戻れ」

例えば、ある試食コーナーで子供が誤って楊枝を口に刺してしまい、親が「どうしてくれる!」と当然クレームをつけてきました。「お客さまは常に正しい」とする当店ではどうしたか。コンプライアンス過剰の日本では試食コーナーを安易に撤去するところですが、スチューはきちんと謝罪した後、「もっと喜んで頂ける本質的な正しさの追求」として、楊枝の替わりにプリッツに変更することで、お客さまにとっての価値を損なうことをしませんでした。

 

日本のヤオコーも「会社を支えてくれるお客さま一人ひとりを尊重しよう」「お客さまの心を捉えるのは値下げよりも誠実さ」といった正しい価値観と実践に支えられて結果としての高業績があります。松下幸之助さんも「長い目で見れば、世間、大衆というものは神のごとく正しい」(『実践経営哲学』)と仰っています。良い会社になるための最重要の経営の原理原則は「お客さま第一」に他なりません。その実践は、三波春夫さんが語った「人間尊重の心」が企業文化となるまで長い目で育み、理念を求心力にしてお客さまへの誠実さを行動に落とし込む人間成長の徹底こそがお客さまからの評価を分けることを知らなくてはなりません。


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