「考えるな!感じろ」と日本語台詞がつくこの言葉。
ブルース・リー主演の映画『燃えよドラゴン』に出てきます。劇中では、格闘技の師匠である彼が弟子に稽古をつける際、戦いのまさにその場面でも考えて動くクセを直すように指導するときに言い放ちます。
実はこの台詞には続きがあります(映画字幕より一部改変。筆者日本語訳)。
It’s like a finger pointing at the moon.
Do not concentrate on the finger, or you will miss all of the heavenly glory.
月を指す指に似ている。指に気を取られるな。さもないと栄光を見失うぞ。
文脈としては、指=自分の技術・技、栄光=相手を倒す・勝利、と読み替えるのだと思います。ゴールは倒すことであり、自意識が過ぎて自分に固執すると相手を見失ってゴールが遠のく、敷衍すると、足元に気を取られ過ぎるな、相手を見て柔軟に対応せよ、目的と手段を間違えるな、などかもしれません。
ややもすると冒頭の台詞だけ切り取られ、「Thinkの否定、Feel第一」と誤解されることもあるものの、実際のリー本人はというと、独自の格闘術・哲学(截拳道:ジークンドー)を作り上げるなど、体系立てたり考えることの軽視とは真逆で、普段は考えに考え抜き、鍛えに鍛え抜いていたものと思われることから、これは劇中の台詞ではありますが、こうした背景も含めての理解がよいのだろう思います。
さて、企業経営の観点からどのようなことを感じますでしょうか。
私が一番感じたのは「現地現物」です。ただし、単に現場に顔を出して見る・知るではなく、知識・理論を備え、机上でもなんでも可能性を考え抜き、仮説を持ち、その上で現場ではシンプルに見て感じる。そうすることで、より多くのことが目に飛び込んでくるだけでなく、より“意味”を持つようになるのだと思います。「見ている」から「見えている」「より見えている」へ、と申しましょうか。「Think」あっての「Feel」の大事さを思います。
皆さま、冒頭の言葉をリフレインしながら頭を素の状態にリセットしつつ、あらためて現場を回ってみてはいかがでしょうか。