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「歓んで、喜ばす」循環で強みを生み出す

経営のヒント
2023.03.03

企業の目的は何かと問われれば、「顧客の創造である」というピーター・ドラッカーの言葉が想起されます。

企業に求められるのは、お客さまが何を求めているのかを知り、商品・サービスとして届けることです。それが私たちの存在意義となります。同時に私たちが働く原動力がそこにあります。私たちは、誰かの役に立とうとする根源的な欲求を持っています。

 

ドラッカーは、組織についてこう述べています。

「企業をはじめとするあらゆる組織が社会の機関である。組織が存在するのは、組織それ自体のためではない。社会的な目的を実現し、社会、コミュニティ、個人のニーズを満たすためである。組織は目的ではなく手段である。」(ドラッカー名著集(13)『マネジメント─課題、責任、実践』[上])

誤解を恐れずにいえば、誰かの役に立とうとする欲求を満たすために組織という手段があるのかもしれません。

 

私のお客さまで、飲食店チェーンを国内外に展開させるなど、創業以来成長しつづけている会社があります。この会社の創業者は「会社は、社員みんなの自己実現を手助けするツールだ」という言葉を遺しています。同社では、お客さまを「歓んで、喜ばす」という考えが浸透しています。ここには、「お客さまを喜ばせることが、わが歓びであり、その歓びの探求がお客さまを喜ばせる強みを作る」そんな思いが込められています。

 

顧客を創造するためには、お客さまの立場に立ってものを考えることが求められます。それによって、お客さまが本当に望んでいるもの、あるいはお客さまも気づいてないニーズを発見することができるからです。

ただし、発見を得れば、新しい商品が作れるわけではありません。そうした発見を「ぜひ実現したい」という衝動を自分たちの中に見出すことも大切です。「お客さま第一」を考える際に、自分たちの衝動を見出すことについてはあまり強調されません。大切なのは、ただお客さまを喜ばすのではなく、「歓んで、喜ばす」の循環です。

 

「歓んで」が欠落してしまう背景には、正解探究志向があります。お客さまの立場に立って考え、これまでにない洞察を得ても、「じゃあ、それで売れるのか」「利益は出るのか」「シェアをどうやってとるんだ」という説明責任が求められます。もちろん、そうした分析も必要です。しかし、その説明に追われて熱量が失われてしまうのは残念なことです。そもそもお客さまも気づいていないことを実現するのに正解などあるはずがありません。

 

ビジョナリーカンパニー2の著者、ジム・コリンズは、企業は「弾み車」だといいます。成功している企業は、スマートな戦略を立てたから成功したわけではありません。戦略は、実行されない限り何も得られないし、何も学べません。

企業の成功は、企業という重い車を押し続けることで、いつしか弾みがつき、気がつけば強みとなる組織能力を得ていたというプロセスをたどります。

 

このとき、原動力となるのが「針鼠の概念」です。針鼠の概念とは、
1.情熱をもって取り組めること
2.自社が世界一になれる部分
3.経済的原動力になること
という3つの円が重なる中心の領域に集中するという考えです。ビジョナリーカンパニー2の中で紹介され、「良い企業」から「偉大な企業」へと変革するために必須の概念になります。

 

この「針鼠の概念」による「弾み車」は、まさにお客さまを「歓んで、喜ばす」循環のことです。針鼠の概念で探求しようとしているのは「世の中でこんな存在になりたい、そのための商品・サービスを届けたい」という衝動です。

働く仲間と共にこのような衝動を見出すために組織はあります。そうした環境をデザインし、お客さまから学び、働く仲間と対話できるようにしていくことが、経営者や私たちコンサルタントの大きな使命です。


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