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日銀は金融を正常化させよ

小宮一慶のモノの見方・考え方
2023.08.22

インフレ率がなかなか下がりません。年初の4%台からは下がったものの3%を超すインフレが続いています。3%のインフレというのは、お金の価値が1年で3%下落することです。100万円現金や預金を持っていれば、そのままでは年に3万円程度価値が下がり、購買力が落ちるのです。それを補填するのが、金利です。

デフレ傾向が続いた日本では、政策金利である「コール翌日物(銀行間で1日だけお金を貸し借りする金利)」をゼロ近辺に抑え込み、さらに、世界中の主要中銀では例を見ない長期金利の誘導を「イールドカーブコントロール」の名のもとに行ってきました。現状では上限は0.5%です。デフレ下でも異常な状況でしたが、インフレ率が上昇してもそれをやり続けることはもっと異常なことです。

米国では、インフレ率が4%台に対し、政策金利(短期金利)は5%、7%台のインフレ率のユーロ圏では政策金利は4%です。米国やユーロ圏では、インフレを鎮める意味もありますが、インフレを補填する金利が設定されているのです。

日本では個人金融資産が約2千兆円あり、その約半分の1千兆円が現預金です。このままでは、年間30兆円国民の資産が目減りします。

日銀は金融引き締めを今はやるべき時期ではないとしていますが、「引き締め」ではなく「正常化」を行わなければならないのです。

金利が上がると、1000兆円以上の国債を抱える政府は大変という話が聞かれますが、国債の半分以上を保有しているのは日銀です。国債金利で日銀が得た利益を政府は、税や配当という手段で日銀から吸い上げればいいのです。国債の残りの半分も大部分は金融機関が保有しているので、日銀当座預金へ付けている金利を下げるなどして、銀行の利益を減らし日銀にその分儲けさせ、それを政府が吸い上げればいいのです。

私も以前から述べているように、金利が上がれば日銀が保有する国債の価値が下がり、日銀が実質的に債務超過になるという懸念もありますが、従来から日銀が主張しているように、日銀は国債を満期保有するということを続ければ、当面は危機を回避できると考えます。

いずれにしても、しばらくはインフレが継続する懸念があり、これでは、国民の財産は減る一方です。円安も進み、この国の購買力も下がります。この際、一気に金融を正常化させることが日銀の使命だと考えます。

選挙に配慮して正常化を遅らせるようなことがあれば、政治におもねって日銀の機能を使い果たしてしまった黒田総裁の時代と同じです。日銀総裁は、勇気をもって金融を正常化させてほしいものです。


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