最近テレビを見ていると、パーク24が運営する「タイムズカーシェア」のCMをよく見かけます。内容は、法人にカーシェアの使用を促し、法人会員を獲得しようとするものです。今日は、この施策が功を奏すのかについて考えてみたことをお伝えしたいと思います。
カーシェアの市場規模・シェアは?
富士総研の調査によると、国内のカーシェアの市場規模は2018年382億円。また、2030年には4555億円まで拡がると予測されています。
公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団の2022年3月の調査によると、国内のカーシェアの会員数は約260万人で、使用可能な車両台数は51,000台。
2022年末の国内の運転免許保有者8184万人(「運転免許統計令和4年版」より)ということを考えると、まだまだ多いとは言えない状況です。
国内のカーシェアの使用台数51000台のうち、30000台を所有しているのが、パーク24が運営するタイムズカーシェア。現在は47都道府県に14188か所のステーションを展開し、会員数は約200万人となっています(2022年末時点)。車両台数で言えば、国内で64%のシェアを持っています。
カーシェア市場を伸ばすための課題とは?
タイムズカーシェアを運営するパーク24。駐車場ビジネスのパイオニアでもあります。タイムズカーシェアのビジネスは、その駐車場事業が土台になっています。パーク24は地権者から借りた土地を駐車場として運営しており、その駐車場の一部をカーシェア用車両の置き場にしています。地権者に支払う平均賃料は駐車場1台スペースあたり約2万円。裏を返せば、1台あたり2万円以上の営業利益が出ていなければ儲かりません。
ちなみに2023年10月期の1台・月あたりの営業利益見通しは1万8000円程度。2019年10月期に初めて2万円を超えたのですが、2020年10月期はコロナウイルスの行動制限を受けて2300円まで低下。行動制限の緩和に伴い需要は回復しつつありますが、2022年10月期、1万4500円までしか戻りませんでした。
この1台・月あたりの営業利益を増やすには、稼働率を上げる必要があります。稼働率の数字は見つからなかったのですが、自身の経験から土日や祝日に予約が埋まっていることが多いのですが、平日の稼働率が低いという課題があると考えます。仮に土日や祝日の稼働を増やすために増車をしたとしても、土日や祝日しか使われないということでは、1台あたりの営業利益を上げていくことは難しいと考えます。
打開策は?
平日の稼働を増やす施策として、法人の開拓が挙げられます。2017年ごろから駅や空港で借りやすくする「一次交通との連携」として強化を図り、法人会員の割合は41%まで伸ばしました。しかし、この割合は2018年から伸びていません。
2023年5月から同社として初めてのテレビCMを制作し、関東圏で放映。YouTube広告などでも放映し「カーシェアで働き方を変える」というキャッチコピーのもと、法人会員の強化を行っています。パーク24のこの打開策から「認知が不十分だった」ということが課題だったと考えられますが、果たして認知が拡がれば法人会員は伸びるのでしょうか。私は打ち手としては弱いように感じます。
考えなくてはならないことがあります。それは「既存の法人会員の稼働状況は十分なのか?」ということです。新規の法人会員数を伸ばすことは必要なのですが、伸ばしても実際に車両が稼働していないということでは元も子もありません。
既存の法人会員向けのサービスに目を向けた時に、例えば「借りたくても借りられない」ということが起こっている可能性があります。会社周辺や駅周辺にカーシェアができる車両数が十分なのかという問題です。タイムズカーシェアは、車両台数は業界№1ではあるのですが、首都圏への配備率が競合に比べて低い事実があります。
その他には、社内の稟議や使用の管理、経費の管理、そのためのプラットフォームの整備などの管理面での使い勝手の問題も考えられます。もともと個人向けのサービスだったこともあり、そのサービスをそのまま法人向けに展開している可能性もあり、法人向けの仕組み・システム・体制が整えられていないことが考えられます。
ビジネスの定石として「良い商品・サービスは紹介されて拡がる」というものがあります。ここに立ち返ると、法人会員が伸びなかった要因は、現状の法人サービスが充実していなかったのではないかと考えられます。
もし、タイムズカーシェアが上記のことにすでに手を打っていて、満を持してあとは会員を増やすだけという状態であれば、この施策で利益率の向上が見込めるかもしれません。果たしてどのような結果になるか見守りたいと思います。