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管理職の不満の本当の原因は何なのか?~ある会社の事例より~

経営のヒント
2024.02.21

社員が会社に対して不満を持たないということは、なかなかあり得ないことかと思いますが、できる限り、その不満を払しょくしたいと思うのが、経営者の心情ではないでしょうか。

その中で、もしかすると、今日ご紹介する会社のように、社員が会社に対して不満を持っているというケースもあるかと思い、その原因について考えたことをお伝えしたいと思います。

■対策しても管理職の不満が消えない
ある製造業の企業で組織診断を実施しました。全従業員に対して、Web上で匿名でアンケートに答えてもらうもの。自社の社風、上司との関係、自身の成長の実感、自社への満足度などの項目について実施しました。

Webで且つ匿名でということもあり、率直な意見が多く寄せられました。良い点も多く挙げられていましたが、課題として浮き彫りになったのが、「管理職の自社への満足度が低い」ということでした。

それは、社長や幹部からすると少し意外な結果でした。日常の業務の中では、率先して動いて、部下や後輩の業務的な指導をよくやってくれていたからでした。

そういったこともあり、その件はそこまで問題視をせずにその他に挙がった課題について対策を打ち、またその1年後に組織診断をおこないました。そうしたところ、前回と同様に、「管理職の自社への満足度が低い」という結果が出てきました。

満足度が低い理由として管理職から出ていた意見は、「会社に対して、こう変えてほしいという意見を出しているが変わっていない、だから言ってもしょうがない」というもの。

一方で、社長・幹部は、この管理職からのこのコメントに対して「他責」と感じていました。「他責ではなく自責で動いてほしい、自分事として動いてほしい」という想いが社長・幹部にはありました。

そこで社長と幹部は、「経営陣と管理職の意思疎通がうまく図れていないのではないか」という仮説を立て、マネージャー会議というものを新設。そこで管理職の考えていることを引き出し、社長・幹部とすり合わせをおこなう機会を定期的につくりました。

そしてさらに1年後、改めて組織診断を実施。管理職の満足度はどうなったかというと、依然として変化はなく、低い状態でした。管理職から不満は前回と変わらず、「言ってもしょうがない、変わらない」というものでした。

社長・幹部としては、こちらから歩み寄って、すり合わせをしているのにもかかわらずのこの結果。社長、幹部は、何が原因でこのような状態が続いているのかお手上げになり、私に依頼が来ました。管理職にヒアリングをおこなって、本音がどこにあるのかを探ってほしいと。そしてその結果から、改めて管理職に対しての取り組みを見直したいということでした。

■管理職のヒアリングから見えてきたこと
以下のようなことを聞いていきました。

・本音として会社のこと、仕事のことをどう思っているか?
・会社に対して、どうなってほしいと考えているか?
・自社を良い会社だと思っているか?悪い会社だと思っているか?その理由は?
・今の会社の仕事を良い仕事だと思っているか?やりがいのない仕事だと思っているか?

その結果、

仕事に対してワクワクまでは感じていないが、仕事そのものに対してやりがいを感じている。また、上司や仲間へ対する敬意も持っている。

ということがわかりました。

一方で「言っても変わらない、しょうがない」となっていた不満の原因は何だったのか。私は
「組織としての役割が明確になっていなかったから」と考えました。

どういうことかというと、管理職の方々は、製品をつくるための工夫や部下・メンバーへの業務的な指導、上司への業務的な面での相談などの「業務上の役割」はしっかりと果たしていました。また、管理職の方々は、想いの強弱はありましたが、会社を良くしていきたいという想いを持っていました。

一方で、管理職の方々は「組織としての役割=会社全体を良くすること」についての役割は果たせていませんでした。言い方を変えると、自身が会社を変えていく立場にいる・その役割を担っているという認識がほとんどありませんでした。その役割は、「社長や幹部の仕事で、自分は現場を良くすることが役割」と認識していました。

社長や幹部が「他責」と感じていた部分の原因がここにありました。管理職には、その役割を担うという認識がなかったのです。

では、なぜこのような状態になったのでしょうか?

それは、社長や幹部は、管理職の役割について明確に定義し、示すということができていませんでした。そこに要因があったと考えます。

その話を社長・幹部へ伝えたところ、社長から「私が会社経営に幹部を巻き込んでいなかった。私が幹部の役割を定義できておらず、幹部にも示し、伝えきれていなかったことが一番の原因。」という話をされました。

私の分析を真摯に受け止め、本質的な課題を明確に自身の口からお話される姿勢から、この経営者の人間力の高さを強く感じました。

■「組織としての役割の定義」は手段に過ぎない
上記の社長のお話を受けて、私がもうひとつお伝えしたことがありました。それは「組織としての役割は、『ありたい姿=ビジョン』を実現するための手段であるということ。「10年後こんな会社になりたい、だからこの役職の人にはこういった役割を担ってもらおう」と考える流れが望ましいのです。

この会社では、自社が10年後こんな会社になっていたい、こんな状態になっていたい、という『ありたい姿=ビジョン』も明確になっていませんでした。そこで、ビジョンを検討し、示す必要性をお伝えしたのです。

この会社のように「ビジョンが明確ではない」、「役割が明確ではない」という中堅・中小企業は多いと感じます。しかし、それでは、この会社のような問題が起きる可能性は高いと言えます。

管理職や社員の不満について表面上で原因を考えるのではなく、本質的な原因が何なのかを考えるヒントにして戴けると嬉しく思います。


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