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「仕事に人を付ける」と「人に仕事を付ける」

経営のヒント
2024.03.08

先日、人手不足かつ離職率が高い業界・業種の中小企業経営者の方とお話をしていたときのことです。その方が仰るには、「営業系の中途採用の募集をかけても応募がほとんどない」「漸く応募があって、その時は『良さそう』と採用しても、見込んでいたほどの成果・成長が見られず、結果、短期で辞めてしまう」とのこと。「人がいない」と嘆く状況がずっと続いておりました。

人がお辞めになる背景は、本人と会社のどちらかが一方的に良くないことはあまりなく両方が絡んだ複合的なものではありますが、その会社でこれまで何人もの方が辞められたときの状況をお伺いするに、どちらかと言えば会社側、具体的には「採用時に想定した(約束した)役職や業務の遂行を果たせない(からダメ)」という、ある種、短絡的な意識や対応が強いように感じました。

よくよく伺うと、採用時の人物の見極めがしっかりできていない、人材育成の態勢・体制が整っていないなどの課題もありましたが、「人を大事にする」を理念として掲げているなか、その理念に沿った部分が少ないように感じたわけです。「人に寄り添っていない/人に優しくない」。

ここで、タイトルにある「仕事に人を付ける」と「人に仕事を付ける」です。

これは業務遂行の体制を考える際の起点の違いで、前者は仕事が先で、あるべき/行うべき業務内容と役割分担を先に分解・明確化して、そこに人員を配置していく発想、一方、後者は人が先で、今所属している人が遂行できる業務をしてもらうという発想です。

事業が拡大していて会社に勢いがあるときは仕事量(業務量)も増え、積極採用で人員拡大を図り、「人に仕事を付ける」の発想でのデメリットは顕在化しにくいものと思います。しかし、成長が鈍化するなどして状況が変わると、仕事量が減り、採用を絞るなど現有社員での業務遂行を図ろうとするなかで、兼務体制や属人化などでの業務負荷の偏り、人材の疲弊・やる気の低下、組織の硬直化による生産性・効率性の改善の遅れなどが目立ってきます。

こうした背景から、「仕事(業務)に人を付けるべし」ということがかなり前から言われております。しかし、すべての場面において本当にそうでしょうか。

冒頭の会社様には、「採用当初の成長目標を目指して育成を図りつつ、そうでなかったとしても、本人の『強み』に焦点を当てて、営業系の中でもフロントだけでなくミドルやバックオフィス、あるいは他の職種への転換も含め、本人が活躍できる業務環境を整える発想でも考えていただきたい(実際、様々な業務で人手が不足している/やりたいことができていない状況)」というような「人に仕事を付ける」発想でのことをお伝えしました。

何人もの方がおおむね同じ理由でお辞めになられていたこともあり、今後は「仕事に人を付ける」発想だけでなく柔軟に対応されるとのことでした。

人材採用をしたいが応募は少ない、経営陣が挙げる取組課題に対して既存社員ではノウハウ不足などで対応が難しい、などの状況があるのであれば、人材採用と育成という場面において、どちらか一方の発想にこだわるのではなく、「仕事に人を付ける」発想で採用活動と初期的な配属・育成を行い、そのあとは「人に仕事を付ける」という発想で(離職防止も含めて)人材管理をしていくことも1つのやり方かもしれません。


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