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出生数の減少以上に深刻な婚姻数の減少

時事トピック
2024.02.29

厚生労働省から227日に2023年の出生数(速報値)が発表されました。結果は前年比5.1%減の758631人と8年連続の減少で過去最少を更新しました。

ベビーブームのピークであった1973年の2091983人と比較すると約3分の1となっており、100万人を初めて割り込んだのが2016年だったことを考えると急激に少子化が進んでいることが分かります。

実は出生数以上に減少幅が大きいのは前年比5.9%減の489281組となった婚姻数です。日本は婚外子の多い欧米と異なり、結婚と出産の結びつきが強いです。そのため婚姻数は出生数の先行指標となります。2023年4月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した推計(中位)では2024年以降は出生数が一時増加に転じる予想となっておりますが、この婚姻数を見ると予想を下回る可能性も十分あると思われます。

政府は「異次元の少子化対策」として児童手当や給付金など、子育て世帯への支援を掲げています。確かに私も三人の子どもがおり、塾や習い事など当初の想像を上回る出費が続いており、このような支援はとても助かります。経済的な事情で出産をためらう夫婦の後押しにはなるでしょう。しかし、そもそも結婚する人が減ってしまっては政策の効果も限定的なものになります。

2020年国勢調査での生涯未婚率(50歳時未婚率)は男28.3%、女17.8%となっています。1990年には男女とも5%前後だったことを考えるとこの30年で大きく増加したことが分かります。未婚率が上がった要因として結婚することが当たり前だった時代からの価値観の変化というものもあると思います。しかし前述の2020年国勢調査によると男性の中でも非正規社員の未婚率が60.4%と正社員の19.6%と比較して圧倒的に高く、出産と同様、経済的な問題によって結婚の機会を得られない人も沢山居るのではないでしょうか。現在も結婚する際、一定の条件に合致していれば、新居の準備にかかる費用を補助してもらえる「結婚新生活支援事業費補助金」など結婚を後押しする制度もありますが、子育て支援と比べるとインパクトの弱さが否めません。東京都が独自のマッチングアプリを2024年度に提供開始することが決まっていますが、個人的にはもう少し経済的なインパクトを出す取り組みをしても良いのではないかと思います。

バブル崩壊後に日本の生涯未婚率が上昇していているのは、経済が停滞した失われた30年の間、賃金が上がらなかったことに起因していると考えられます。現在においてもインフレの影響もあり、物価を考慮した実質賃金は202312月までで21ヵ月連続のマイナスです。昨今では賃上げの話題が多く、過去数十年になかった率での賃上げを実施する企業が増えています。経営側としては賃上げ圧力は頭の痛い問題ですが、少子化対策の歯止めをかける上で良い経済の好循環を実現させていく必要があると思います。


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