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私たちが欲しているのは、自己の自由ではない。自己の宿命である。

今週の「言葉」
2024.03.08

-福田恆存『人間・この劇的なるもの』より

今週の「言葉」は、福田恆存(1912-1994)の不朽の人生論からの引用です。

もうすでに早桜も舞う季節となり、学生さんたちを代表に様々な別れと旅立ちの行き交う時節となりました。若い世代だけではなく、私のような戦後30年後に平和な世の中を生きることを許された全世代の日本人は、やや「自由」という本当の意味を忘れかけているのかもしれません。

学校教育だけではなく、ビジネスの世界でも同じことが言えます。マネジメントの父、ドラッカー先生は次のように語ります。

「自らの果たすべき貢献は何かとの問いからスタートするとき、人は自由になる。責任を持つがゆえに自由になる。」

(出典:P.F.ドラッカー『明日を支配するもの』ダイヤモンド社)

国家も同じことです。私たちは民主主義を選択した国家に暮らしており、その対極にある全体主義を排除しようとしている筈です。民主主義社会や国家とはさらに2つの主義から成立します。すなわち「自由主義」と「共和主義」です。現代はやや「自由主義」の教育に偏っています。「共和主義」とは公共心や世の為人の為、という精神のことを指します。

世の中をより良い場所にしようとしてきた歴史的賢人(例えばビスマルク、渋沢栄一、松下幸之助、或いはドラッカー等)には共通する思考の階層があります。

ざっくり表せば下記のようになります。

  • 第一層:哲学レベルの思考力(人間とは、何のために生きるのかを問う価値判断軸)
  • 第二層:パラダイムレベルの思考力(ものの考え方、思考パターン)
  • 第三層:ポリシーレベルの思考力(具体的=コスパがどうだとか、実現可能かどうか等)

福田恆存の冒頭の言葉は①の第一層を問う言葉です。本書の中で福田は現代の「自由」について、「他人に利用されまいとし、他人を利用しようとする心がまえに過ぎない」或いは、「ひとびとは自由の名のもとに奉仕を拒絶する。あるのは取引としての奉仕だけだ」と語ります。

経営およびリーダーの育成に関わっていると、優秀なはずのリーダーが無意識に組織の成長や次世代の人財の成長を阻害しているケースに出くわします。これは心理学の成人発達理論やこれまでのリーダーの成長の研究の蓄積である程度説明できることが多いのですが、その根底に誤った自由主義及び自由への認識があります。ここでは詳しくは述べませんが、前述の第三層ばかりを求めがちなことと、他者や組織の成果に対する奉仕が不足しているのが特徴です。

混沌とした不確かな時代だからこそ、未来のために、次世代のために、私たちはもう一度、忙しくとも、目の前の仕事から顔をあげ、「何のために生きるのか」との根本的な問いから仕事や事業と、そして共に歩む仲間と向き合うことが求められているように感じるのです。


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