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米国非農業部門雇用者数他の結果

時事トピック
2024.04.11

45()に、市場関係者の注目度が極めて高い、米労働省による非農業部門雇用者数をはじめとする統計結果が発表されました。以下が主な内容でした。雇用は、雇用者数、失業率ともに予想以上に強く、総じて勢いを維持していることを示す結果になりました。

3月米非農業部門雇用者数変化:+30.3万人、予想+20.1万人
3月米失業率:3.8%、予想3.9
3月米平均時給前年比:+4.1%、予想+4.1
3月米平均時給前月比:+0.3%、予想+0.3

一方で、賃上げの鈍化も指摘できそうです。
3月の平均時給、対前年比伸び率4.1%は、2月の4.3%から低下し、これで2か月連続の低下となりました。雇用者数と違って、こちらは予想通りとなりました。

上記からここでは、2つの点について考えてみます。ひとつは、移民数の増加です。

米非農業部門雇用者数は、+20万人が基本的な巡航速度だと言われていきました。それを上回れば良好、下回れば不調として、経済を捉えることができる1つの材料とされます。これは、米国の人口が毎年およそ220万人~250万人程度のペースで増えていて、1か月あたりでは約20万人となるためです。つまりは、増えていく人口を賄うだけの働き口が確保されているのかどうかが、+20万人のラインとなるわけです。事前予想も、今回はこの巡航速度どおりでした。

そのうえで、今回は予想を大幅に上回っています。背景として挙げられるのが、移民の増加です。米議会の超党派機関である議会予算局によると、2023年の米国の純移民流入数は推計330万人となっています。コロナ禍前の2010年~2019年の年平均約90万人を大きく上回っています。

この勢いがさらに続いているという指摘もあります。背景に、コロナ禍で移動が止まっていた反動と、今年の選挙前の安定した状況のうちに移動を求める人が増えたことなどが要因としてあるのかもしれません。

移民による労働供給数が社会的に高まったということで、その移民を比較的落ち着いた賃金で雇用することができたとすると、雇用者数ほどには賃金が伸びていないという状況がうなずけます。

46日の日経新聞を参照すると、米国で転職ブームが終了し「自発的な離職」が全雇用者に占める比率が低下しているようです。それを反映するように、転職者の給与の伸びが2月は前年比5.3%となり、ピークだった20227月の8.5%から大幅に鈍化していると紹介されてます。このことも、冒頭の指標で賃金の伸びが落ち着いている要因として想定できそうです。

もうひとつは、物価上昇・インフレへの影響です。

米国のインフレ率は、2022年から鈍化を続けています。上記の賃上げ状況の観点からは、人件費増加の程度はインフレをさらに押し上げる要因とはなりにくいように見受けられます。

米国でインフレ率が今後落ちていて推移すれば、利下げの実施が現実味を帯びてきます。

景気、雇用が現在の状態で比較的良好なまま推移し、インフレが落ち着いて利下げが早期に始まっていけば、米国経済のソフトランディングが見えてくるのかもしれません。

米国経済の動向は、日本経済や株式市場、為替、借入金利等への与える影響が大きいものがあります。主な内容を把握し、自社や事業に与える影響を想定するのは、有意義だと思います。


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