企業に訪問する中で、最近よく耳にするのが、人が採りづらくなってきたというお話です。特に新卒については、大手の賃上げの影響を受け、獲得競争が激化。その傾向が強くなっていると言います。
今日は、これから本格化する2026年4月入社の採用活動(2026採用)の企業側の動き方について考えたことをお伝えできればと思います。
■新卒採用の大まかな動き
まず、現在の新卒の就職活動の流れについてのおさらいをしていきたいと思います。
3年生の夏ごろから活動がスタート。夏・秋にインターンシップがあります。選考活動が早いベンチャーや外資系の企業などは、秋・冬から説明会や面接を進め、年内に内定を出すところもあります。通常の企業は、1月ごろからエントリーシートなどが始まり、説明会も始まります。2月以降、説明会や面接が続き、3~6月にかけて内定が出て、就活を終わらせるという流れになっています。見方を変えると、2026年4月入社の新卒を採用するためには、企業側は2024年の夏ごろから動く検討をする必要があるということです。
政府の指針で大手企業は6月から選考解禁となっていますが、以前に比べると順守する企業は減っているように感じます。
■2024採用を振り返る ~採用環境は?~
次に、2025年4月入社の採用活動(2025採用)の状況について振り返ってみたいと思います。そこで、学生がどのように動いていたかという数字を観ることで、企業の動きを推察してみたいと思います。
まずはこの数字から観ていきましょう。
求人総数(新卒採用を実施する企業の採用予定人数を合計したもの)です。
2025採用は『80万人』でした。ここ20年の中で最も多かったのが2009採用の『95万人』。リーマンショックが起こる直前の年の数字で、俗に言う「いざなみ景気」というゆるやかな好景気が続いた時期でした。コロナ禍の2022採用時は『68万人』ということで、そこからは約10万人増えていることになります。
では、就職活動する学生の数は、どのくらいなのでしょうか?
求人総数よりも少なければ、内定を取ることは難しいし、逆に多ければ内定を取りやすいと言えます。
2025採用では『45.5万人』でした。
すると、求人総数(80万人)÷学生数(45.5万人)=1.75となり、このことを有効求人倍率と言っています。言い換えると、選ばなければ、『1人の学生が1.7社の内定をもらえる採用環境』ということです。
この数字も先述の2009採用が最も高く『2.14』でした。コロナ禍では『1.50』。そこからは上昇しており、学生側からすると就職がしやすくなっていると言えます。
ちなみに、この有効求人倍率、この30年で最も低かったのは、2000採用の『0.99』。いわゆる就職氷河期と呼ばれる時代で、1.0を切っていることからかなり厳しいことがわかります。
話を戻しまして、求人総数を企業の従業員数別に見てみると
・従業員数300人未満の会社の求人数は、43.3万人(0.6万人増加)
・従業員数300人~999人未満の会社の求人数は、15.2万人(0.5万人増加)
・従業員数1000~4999人の会社の求人数は、16.0万人(1.0万人増加)
・従業員数5000人以上の会社の求人数は、5.2万人(0.2万人増加)
となっており、5000人以上の大企業から内定を勝ち取るのは、狭き門となっていることがわかります。言い換えれば、大手企業は買い手市場で、中堅・中小企業は売り手市場と言えます。
■2025採用を振り返る ~内定状況は?~
次に見ていきたいのが『内定率』です。
全体のどのくらいの学生が、1社以上の内定を保持しているかという数字になります。ポイントは、どの時期に、どのくらいの内定が出ていたのかという部分です。
例年、最終的な内定率は、9月末に『85%前後』となります。
まず注目して頂きたいのが、2025採用の6月末の数字が『81.7%』となっており、学生全体の8割が内定を持っている状態です。採用環境が比較的整っていたコロナ直前の2021採用は『65.1%』。これよりも大幅に高く、企業の採用ニーズが旺盛なことが伺えます。
そしてさらに注目は、2025採用の3月1日の『34.3%』という数字。採用環境が活況だった2024採用で『18.1%』という数字だったので、この数字がいかに高い数字かということがわかります。その流れから3月末、4月末も2024採用に比べて、かなり高い数字となっています。
ここからわかるのは、企業側の内定の早期化です。以前は、5月~6月にかけてが山場となっていたのですが、2025採用では、2月末で初めの山場がきて、3月~4月に本格的な山場が来たという状態でした。
例年から比べるとかなり大きな変化と言えます。
■2026採用はどうなるのか?企業側が考えるべきことは?
2025採用の動きやこれまでの傾向を考えると、さらなる内定の早期化が想定されます。
具体的には、2月末・3月末の内定率がさらに高まり、それに伴い、年明けすぐの内定率も上がると予測します。そして、6月以降は学生がほとんど残っていないという状態になると予想します。
採用は、マーケティングであり、生もの。タイミングを逃すと失敗してしまいます。企業側としては、どこの山場で採り切るのかという作戦がとても重要になります。ひとつの考え方としては、2月末・3月末に焦点をあて、ここで採り切る。もし、ここでと採り切れなければ、4月から5月にかけての山場で勝負をかける。という2段階アプローチは有効な方法だと考えます。
ここ数年の傾向や新卒採用を実施している企業の声を聞くと、大手企業のさらなる賃上げなどにより、2025採用に比べ、採用がしづらくなる可能性が高いです。しかし、中堅・中小企業でも、準備や作戦次第で新卒採用は効果を上げることができる手段だと考えています。
今日のお話をヒントにして頂き、良い人材を採用して頂けると嬉しく思います。