5月上旬。新卒の新入社員が入社して、1か月が経ちました。
「まだ大した仕事はしていないだろうから、楽なんじゃない?」と思われる方もいるかもしれません。ですがそれは、古代エジプトのピラミッドの壁画に「最近の若い者は…」と刻まれていたという話と同じで、昔の自分たちのことを忘れ、棚に上げているように思います。
このメルマガを読んでくださっている経営者・経営幹部の皆さんも、新入社員だった頃があったはずです。
記憶が薄れている方もいらっしゃるかもしれませんが、私自身は毎日が初めての連続で、心も体も疲労困憊でした。
社会人としてのふるまい、敬語の使い方、電話対応、社内のルール、業務内容、商品知識……。何もかもが新しく、しかも営業職として社外のさまざまな人と接する日々。常に気を張っていたため、外から見れば元気にやっているように映っていたかもしれません。でも、週末になると疲れ切って昼過ぎまで寝ていた記憶があります。
私には教育担当の先輩が割り当てられていましたが、遠方のエリアを担当しており、週に1度しか顔を合わせませんでした。今思えば、これは完全に人選ミスだったと思います・・。
そんな不安な時期、助けになったのが“影の教育係”を名乗ってくれた、同じ部署で同じ寮に住む先輩でした。とても面倒見が良く、豪快な方で、数人で駅前の牛角に行った際に店員さんにメニューリストを渡して「載っているメニュー全部持ってきて!」と注文してしまうようなキャラクター。大変なこともありましたが、その明るさのおかげで非常に楽しい新入社員時代を過ごせました。
その先輩からは、言葉遣いや立ち振る舞い、資料の扱い方や飲み会でのマナーまで、本当に多くのことを学びました。会議や説明会では「必ず1回は手を挙げて質問をする」という“ノルマ”まで与えられました。「常に発言をしておかないと、本当に聞きたいことを聞けなくなるから」という理由でした。
破天荒でお節介な先輩でしたが、社会人として、また経営コンサルタントとしての今の自分の土台をつくってくれた恩人です。新人時代に、そうした存在が身近にいてくれたことに、今でも感謝しています。
新卒として社会に出るのは、一生に一度きりです。
「三つ子の魂百まで」ではありませんが、この時期の経験は、後の社会人人生に大きな影響を与えます。
もちろん中途社員を軽視して良いわけではありませんが、新卒の新入社員には「この人の人生を預かる」という覚悟が、企業には求められます。特に中小企業では同期がいない場合も多く、より丁寧なフォロー体制が不可欠です。
最近は雇用の流動化が進み、新卒入社から定年まで一社で働き続ける人は減っています。しかし、たとえその後に転職したとしても、「最初の会社があの会社で良かった」と思ってもらえるような環境をつくること。そこに企業の社会的責任があるのではないでしょうか。