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カーボンニュートラルと経営について

経営のヒント
2021.10.14

今回は経営と執行の違いについて考えてみたいと思います。

ピーター・ドラッカーは著書「マネジメント」において、マネジメントは、常に現在と未来、短期と長期を見ていかなければならないとして「存続と健全さを犠牲にして、目先の利益を手にすることに価値はない。逆に、壮大な未来を手にしようとして危機を招く事は無責任である。今日では、短期的な経済上の意思決定が環境や資源に与える長期的な影響にも考慮しなければならない。」

と言っています。

 

2050年のCO2排出実質ゼロを目指す取り組みは、まさに経営の実践とリンクすると思います。

2050年のCO2排出ゼロを実現するために、2030年時点で石炭を2020年比で5割、石油を2割それぞれ減らす必要があるとの見方をIEAが示しました。

とはいえ足下では、世界的に石炭や天然ガスの価格が高騰しています。ガソリンも店頭で162円と、7年ぶりの高値で家計に負担感が出ています。それは2050年の実質0に向かって単純に石炭や天然ガスなどCO2を排出する燃料を削減していけばいいわけではないと言うことを示しています。

足元の生産や生活、これから迎える冬の季節におけるエネルギー増加需要などを回していくためには、再生可能エネルギーだけでは足りません。

 

経営に必要な考え方は、経営と執行の分離という考え方です。
経営とは、企業が何のために存在してるかと言うミッション、そして中長期的にそのミッションに向かっていった先の具体像を示すビジョンを示し、中長期的な時間軸で会社の方向付けを行い推進していくことです。

執行とは、比較的短期的な時間軸で事業を運営していくことです。足元の改善などはこの執行に含まれると言っても良いでしょう。

経営と執行は役割の違いなため、ドラッカーの言うようにどちらが重要と言う事はないと言えるでしょう。両方ともが大切であり経営と執行が両立して初めて健全な会社運営ができると言えるのではないかと思います。また、経営と執行については個人の人生においてもあてはめることができるでしょう。

 

足元の執行や生活の事だけを考えて、将来を成り行きに任せるのか、または壮大な将来の事だけを考えて足元の執行や生活をおろそかにしてしまうのか、いずれにしてもバランスを欠いてしまうことになります。

経営と執行をカーボンニュートラルに置き換えて考えると、カーボンニュートラルそのものの意義と、それを実現するための具体的な将来像、そこに至るロードマップを示すことが経営と言えるのではないかと思います。

カーボンニュートラルを達成した将来が地球温暖化を防ぎ地球そのもの持続可能性を高めると信じられていますが、それに賛成をして協力をしてもらわなければいけない人の人数が経営とは比較になりません。
カーボンニュートラルを目指す事は、ミッションやビジョンを示すこと。
しかし、足元の執行で言うならば単純なカーボンニュートラルに向けてCO2を排出する燃料を削減していくという一本槍でいいわけではありません。

世界の人々の生活や経済を回していくということが必要になってきます。

 

経営と執行を両立させていく中でとても重要な論点としては、中長期的なビジョンに向かって進んでいく事は、足元の最大効率を目指す事につながらない可能性があると言うことです。
中長期的には必要だけれども、直近の業績においては重要ではない事を行う事は、短期的な業績の達成圧力にさらされている立場の人にとってみると無駄なことのように思えます。

カーボンニュートラルについて言えば、足元で石油、石炭や天然ガスを活用しながら安定的に電力を供給する事によって経営や生活が成り立つにもかかわらず、再生可能エネルギーに投資をすることによって不安定な電力供給となり、安定的な電力供給元のコストが上がってしまうと言う弊害があります。

足元で少し(状況、立場によっては多く)の犠牲と我慢を伴わなければ、中長期的なビジョンは達成されません。そしてそれを周りの人に受け入れてもらうためにはミッションやビジョンの共有が不可欠なのです。

 

ミッションやビジョンが壮大であれば、現実離れしていればしている程、その共有の難易度が上がります。
カーボンニュートラルにおいても、その実現のためにはそもそも脱成長が不可欠なのではないかという意見もあります。
未来進行形の技術革新によって、何とかカーボンニュートラルが実現できるとする考え方もあります。
それぞれが今の段階では仮説であり、100%正しい答えと言うものは見えていません。
だからといって、何もしないで現状維持に流されていれば成り行きの未来しかやってきません。それこそ産業革命期における気温上昇が3度以上になる未来となり地球環境に多大なる変化が起きる未来がやってくることになるかもしれません。

 

このように新聞を読んで、カーボンニュートラルの記事と自分自身の人生や経営に当てはめて考えてみると様々な学びがあります。
地球そのものを自分事として捉えるとカーボンニュートラルにおける地球経営と執行についての考察が深まっていくのではないかと思います。特にこのような大きな軸で新聞を読むことも1つの新聞の読み方だと思います。


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