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今週の経済の動きと経営の切り口 ~新型コロナウィルスの状況と、備蓄原油の放出について~

経済トピック
2021.11.26

「今週の経済の動き」については、「今週の日経新聞の数字トピック30!」と合わせてお読み頂くことで、より理解が深まる構成になっております。「数字トピック30」に記載している数字に関しては、※( )で番号を記載しておりますので、ぜひ参照下さいませ。

 

 

今週の経済の動きとしては、依然として世界的なインフレ傾向とともに、カーボンニュートラルの動きの継続強化、欧米と中国は比較的好調な経済の中で日本は周回遅れの状況と言う事は変わりません。

 

今週の中で注目した数字としては、半導体大手10社の売上高純利益率が26%となり、四半期で過去最高の業績水準であることや、

日本における新規の上場企業数が120件超と15年ぶりの高水準であること、政府が新型コロナウイルス対策として都道府県に配る地方創生臨時交付金を6.8兆円積み増すこと等があげられます。※(2)、(7)、(20)

 

その中で、欧米などでコロナが再燃していること、パウエル長官の続投が決まる、備蓄原油を放出することで原油高を抑制しようとする世界的な動きがで始めたこと、などいくつか今週のトピックをピックアップしました。

 

 

新型コロナウィルスの状況について

 

ドイツ、オーストリアやベルギーなど欧州の1部の国で新型コロナウィルスが再び増加傾向にあり、1部でロックダウンが行われています。しかしながら、継続する行動制限に市民からの暴動が起きているような状況です。

 

ワクチンの接種率などを見ても、これらの国は7割近くに至っており、なぜこのように新型コロナウィルスの再燃が起こるのかなかなか理解に苦しむ部分があります。明らかなこととしては、ワクチン接種率7割程度では集団免疫に足らないと言うことです。
ヨーロッパはワクチン接種が早期に普及したことにより、予防効果が薄れてきることも感染が再び広まっている要因と考えられます。

今後は各国で3回目の追加接種が必要な状況になってくると言えるのではないでしょうか。

 

集団免疫に至る割合は、ウィルスそのものの実効再生産数に関連します。変異する前の新型コロナウィルスは、実効再生産数が1から3と低かったため、集団免疫は5割6割でも何とかなるのではないかと言う見解もありましたが、デルタ株になったあたりから実行再生産数が8から10程度まで上昇したことにより集団免疫のハードルも上がってしまっています。

 

これに対して、日本の感染者数は圧倒的に低い水準であり、11月25日の新規感染者は東京で27人、日本全体で見ても119人程度で推移しています。※(24)

 

飲食宿泊サービス業を始めとして、新型コロナウィルスの影響で大きな影響受けている業界は、ようやく復活の日の目を見ているような状況ですが、思うような回復にまでは至ってないと言う現状があります。

観光事業者の7割で利用客数が7~8月の「第5波」から増加傾向にありますが、コロナ禍前と比べると8割強で客数が減っています。

本格的な回復に向けて、政府の「Go To トラベル」など観光需要の一層の喚起への期待は大きくなっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出典:日経新聞 11月23日(火)

 

さらに、ゼロゼロ融資と言われる金利ゼロ保証ゼロの融資を始めとした、コロナ禍における緊急融資もそろそろ返済がスタートします。引き続き非常に厳しい状況に置かれている事は変わらず、今までこのような政策によって非常に低い水準で抑えられていた倒産件数(4月~9月で2937件)も、むしろ今後倒産件数が増加に転じるのではないかと言う推測もあります。

 

 

このような状況の中で、海外の動向踏まえながら日本でも慎重な対応が求められると言う見解もあります。

パンデミック抑制や人命最優先当の医療的観点から、マクロ経済の観点、企業経営の観点、また、失業率や自殺の増加といった社会問題の観点等、多様な観点から意見を提示し、総合的な政治決断を下していくということです。

 

これもやはり、企業経営に非常によく似た判断になると思います。個別の強みを衆知を生かして収集し、最終的には政治決断を下すと言うことです。

もちろんこれらのステップの中で、ワクチンの普及や飲み薬の開発と普及、また医療機関のキャパシティーの増加など社会インフラの向上が進んでいきます。これらの進捗状況にも引き続き目を配りつつ、政治的な決断機能が、それぞれの専門家機能が健全に機能しているかどうかと言うことに目を配っていきたいところです。

 

 

 

備蓄原油の放出について

 

原油の高騰が続いており、消費者の生活に大きな影響をもたらしています。
ガソリンの燃料は言ってみれば消費税に近く、生活や仕事において所得に関係なく使用する頻度が高い商品であると言えます。

日本では、170円を超えた場合に石油元売に1ℓあたり5円の補助金を供給し価格の上昇を抑える施策を決定しています。

これに加えて、今回は米国が日本や中国、インド等と協力して備蓄原油を放出すると言うことです。※(19)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出典:日経新聞 11月24日(水) 1面

 

 

 

当然、価格については需要と供給のバランスによって決定されるものであるため、有事のための備えとしてストックされている備蓄原油が市場に放出されると言うことであれば原油の供給能力を一時的に増加させることにはつながりますので価格を抑えられると言う判断と思います。

 

発表によると、米国は約6億バレルの戦略石油備蓄から5000万バレルを放出すると発表があり、このの放出量は約1億バレルとされる全世界の1日の石油消費量の50%半分程度に相当します。※(11)

とは言え、足元の原油相場においては、備蓄原油の市場放出が織り込み済みだったと言うことで相場の変動が起きていません。今後の動向に注目です。

 

ここで重要な問題は、産油国の立場として考えるといずれ需要がなくなる原油が、産油国のGDPの大半を占める状況の中で、現状得られる富をどのように最大化するかと言う思惑が働くと言うことです。

企業経営においても言えることですが、中長期的に見れば需要が明らかに減少していくことに対して、直近の需要が見込める場合にどのように対応していくか、投資回収をどのように考えるかと言う非常に難しい問題があります。

これは、将来的にカーボンニュートラルがどのような具体的な姿になるのかと言う予測とともに、時期的な需給の変化についてもエネルギー全体の観点から捉えて構築しなければいけない戦略です。

 

原油も化石燃料の1つであり、欧州諸国は2040年までに化石燃料による発電をゼロにしようとしています。COP26でもあったように、原油を始めとした化石燃料に関しては将来の大幅な需要減少が見えています。

日本経済においても、今の1億2000万人を超える人口を支えている世の中の諸々のインフラは、将来的に1億人を下回ることが見えている人口に対して過剰になることが想定されます。住宅等の不動産についても同じことがいえます。

 

将来的に構造的に需要がなくなることが見えているからといって、今すぐに需要がなくなるわけでもないことに対してどのように供給体制をとっていくのか、このような課題に直面している業界や企業は多く存在します。

将来の社会の先行きを見据えるためにも、日々の外部環境のインプットや洞察を深めることで、将来に向けた方向付けを思考し実行していく経営力が養われるものと考えます。

 

 

個別の企業の動き

 

今回個別の企業の動きとしてピックアップしたのは、Uberジャパンなど、ネット通販の宅配に参入すると言うことです。

Uberジャパンなどは、ネット上で受注した料理や食品等の配達のオーダーに対して配達人を手配し、配達人が配送しています。このような配達人のような働き方をギグワーカーと言います。

人材仲介会社「ランサーズ」が2021年の1月~2月にかけて行った推計調査によると、国内のギグワーカーは少なくとも308万人になるそうです。昨年の同じ時期に比べておよそ5倍に増えたとみられています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出典:日経新聞 2020年6月23日(火)

 

 

結局、ギグワーカーにとってみても料理や食品だけではなく、ネット通販の宅配も加わりラストワンマイルを支える配達人としても機能すればより稼働率も上がり、身入りも良くなると言うこともあるでしょう。
コロナ禍からの回復段階において、料理のデリバリーの需要がある程度落ち着いてきたと言う外部環境の変化もあります。

Uberはプラットフォームなので、より魅力的な雇用機会をギグワーカーに対して提供できなければ存在意義がなくなってしまいます。

隙間時間で働くギグワーカーに対して、隙間時間であろうが非常に高い稼働率を提供できるプラットフォームは、これからの時代においても貴重な労働力を確保し続けることになるのでしょう。

 

Uberのビジネスは、むしろ配達の案件よりも、労働者を確保するマーケティングが重要になってきます。そのため、労働者に対して適切な稼働状況や待遇を提供できることが競争力の源泉になると考えられます。

 

また、アマゾンに代表される翌日配送が当たり前のネット通販の世界の中では、配達のスピードが競争力を左右する部分もあり、Uberのプラットフォームの強みを活かしながらネット通販側にも競争力の強化と言うメリットがあります。

翌日配送どころか、エリアによっては当日の注文から30分以内の配送が可能になると言うことであれば非常に利便性が高くなります。

 

マーケティング戦略における、パートナー戦略とも言える部分があり、お客さまが何によってその商品サービスを選ぶかと言う理由に、インターネット通販であれば配達スピードと言うものが挙げられます。その商品サービスを選ぶ理由(QPSと言う表現がされることもあります)について、必ずしも自社のリソースだけで提供する必要はないと言うことです。

※QPSについて 

Q(クオリティ = quality):品質。商品やサービスそのもの。
P(プライス =price):価格のことです。
S(サービス =service):サービス。お金を支払わない全ての「その他」の要素です。

 

今はどのような状況になっているか分かりませんが、自転車やバイクなどを活用としたメッセンジャ―のようなサービスは、このUberのプラットフォームに飲み込まれることになるのではないでしょうか。


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